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文献詳細

雑誌文献

胃と腸16巻7号

1981年07月発行

文献概要

今月の主題 実験胃癌とヒト胃癌 主題

イヌ実験胃癌のヒト胃癌研究への貢献

著者: 松倉則夫1 森野一英1 大垣比呂子1 河内卓1

所属機関: 1国立がんセンター研究所生化学部

ページ範囲:P.715 - P.722

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 イヌの胃癌の作製は,N-methyl-N'-nitro-N-nitroso-guanidine(MNNG)を飲料水として投与することで成功した1).しかし,MNNGでは胃癌と共に小腸の肉腫が生じ,イヌの死亡の多くは小腸肉腫が原因であった.この問題は,低濃度のMNNGを用いても,短期間の投与によっても解決されなかった.栗原ら2)は,MNNGの同族体であるN-ethyl-N'-nitro-N-nitrosoguanidine(ENNG)を用いると,小腸肉腫を生じることなくイヌ胃癌を作製できることを見出した.その後,多くの研究成果が,主としてENNGを用いて蓄積され,現在では再現性よくイヌに胃癌を作製する方法が,ほぼ確立されたと言ってよいであろう.

 永くヒト胃癌で見出しえなかった印環細胞癌の発生点3)が近年イヌ胃癌で初めて解明された事実,またイヌ胃癌の化学療法剤の効果判定への応用4),レーザー,放射性線源の留置などの新しい癌治療法をヒトに先き立ちイヌ胃癌へ試用するなど,イヌ胃癌がヒト胃癌の発生,進展の解明,診断,治療法の改善に大きな貢献を示し始めた.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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