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今月の主題 実験胃癌とヒト胃癌 研究
イヌ実験胃癌における胃癌発生点―特に印環細胞型癌発生点の“2層構造”について
著者: 砂川正勝1 村上忠重1 竹下公矢1 中嶋昭1 星和夫1 毛受松寿1
所属機関: 1東京医科歯科大学第1外科
ページ範囲:P.751 - P.756
文献購入ページに移動ヒトの胃癌の発生点については既に村上1)が厳密な連続切片法による病巣の再構築を行った結果,独立した癌巣において癌細胞群が非癌性の上皮と連続している点を発生点と定義した.また,この研究では腺管腺癌は固有胃腺の腺頸部より新たに形成された側枝として発生し,印環細胞型癌は腺頸部よりそれて,それを囲む基底膜を破って粘膜固有層へ浸潤するという事実が示されている.
胃癌が組織学的にどのような形で発生するかを考察する場合には以下の段階を設定し,次いで各々の設階での形態学的証拠を明らかにしていかなければならない.①どのような細胞から生じるか.②本来の胃粘膜上皮あるいは化生性の上皮とは異なる形態を示す細胞が生じるか.③そのような細胞の増殖が持続しているか.④そのような細胞が本来の構造を破壊し,更に浸潤性に増殖してゆくのか.ヒトの胃癌の研究においてはこれらの段階を経て胃癌が発生し進展する全経過を明らかにすることは困難である.粘膜内にとどまっている早期胃癌は,これらの過程の④の段階にあるので,それより以前の段階は推定されるにすぎない.また村上が行ったようなヒト胃癌手術症例の癌あるいはその周辺部の組織学的標本の中に偶然認められた独立した癌巣を連続切片で追跡する方法によっても,③,④の段階が明らかにされたのみである.
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