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文献詳細

雑誌文献

胃と腸17巻1号

1982年01月発行

文献概要

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海外文献紹介「抗生物質に起因する大腸炎と下痢の治療と予防」

著者: 小林世美1

所属機関: 1愛知県がんセンター第1内科

ページ範囲:P.46 - P.46

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Treatment and Prevention of Antimicrobial Agent-lnduced Colitis and Diarrhea: W.L. George, R.D. Rolfe, S.M. Finegold (Gastroenterology 79: 366~372, 1980)

 最近の研究では,Clostridium difficileが抗生物質による偽膜性大腸炎の全例と,偽膜をつくらない抗生物質による下痢の約1/5の例での原因として扱われている.抗生物質と関連のない偽膜性大腸炎や下痢も,しばしばC. difficileによって起こるとされてきた.C. difficileによる下痢の治療で最も広く研究されているのがVancomycinである.消化管からの吸収はわずかである.100例以上がVancomycinで治療が成功している,1日量0.2~2.0gを7~14日間投与する.通常1~2日以内に解熱し,下痢が改善される.ほとんどの例が1~14日で治癒する.ときに治療後4~28日で再燃することがあり,14%に再発をみたとの報告がある.欠点は,高価で,味が悪く,多くの国では手に入らないことである.Metronidazoleも効があり,1日1.2~1.5gを経口で7~15日間投与する.比較的安価である.最近,経口のBacitracinによる治療が報告された.外科的治療は,かつて結腸切除が行われたことがあるが,Vancomycinの出現で切除手術は不要となった.

 次にC. difficileに対する治療原則を述べる.まず軽~中等症に対して;(a)思い当たる抗生剤を中止する.(b)コレスティラミン4gを6時間毎に投与する.(c)反応が48~72時間で起こらねば,コレスティラミンをやめて,Vancomycinを0.125~0.5gを6時間毎経口で7~14日間投与する.重症例に対して;(a)できるなら抗生剤をやめるか,下痢を起こさないクロマイなどの薬剤を用いる.(b)Vancomycinは0.125~0.5gを6時間毎経口で7~14日間投与する.(c)非経口的に水分や電解質を補給する.ただし,Vancomycinを使用する限り再燃の可能性を考えて継続的に培養検査を行う必要がある.BacitracinやMetronidazoleは将来の研究成果を待つべきであろう.抗蠕動剤は禁忌であり,ステロイドの効果も疑問である.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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