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雑誌目次

雑誌文献

胃と腸17巻11号

1982年11月発行

雑誌目次

今月の主題 ERCP―10年を経て―(2)技術の進歩と展開 主題

経口的胆道内視鏡

著者: 竹本忠良 ,   有山重美

ページ範囲:P.1179 - P.1184

 経口的胆道内視鏡検査法は,消化器内視鏡検査法のなかで,最も歴史の浅いものの1つであり,他の検査法が最近飛躍的な進歩,急展開をみせているのに対して,やや立ち遅れている現状である.しかし,現在加速された状態で研究が進んでおり,なんとか早く実用化しようという努力が続けられている.そこで,ここでは経口的胆道内視鏡検査法の現在までの開発状況と問題点に加えて,将来の展望についても述べてみたい.

 胆道内視鏡としては,1923年Bakes1)が術中に喉頭鏡に似た器具を用いて胆管内を観察したという報告が最初のものである.そして,1941年にMcIver2)が硬性胆道鏡を報告し,これ以後はしばらく硬性鏡の時代が続く3)~7)

内視鏡的乳頭括約筋切開術の適応と禁忌―長期予後の検討を中心に

著者: 山口勝通 ,   中島正継 ,   藤本荘太郎 ,   安田健次朗 ,   木本邦彦 ,   田中義憲 ,   赤坂裕三

ページ範囲:P.1185 - P.1194

 今日,膵・胆道疾患の診断に必要欠くべからざる検査法となってきた内視鏡的逆行性胆・膵管造影法(ERCP)の技術1)~3)と,内視鏡的ポリペクトミーに代表される高周波電気メス切断法の技術4)~6)を組み合わせて,胆管結石の非観血的除去を主目的として1973年に開発された内視鏡的乳頭括約筋切開術(Endoscopic sphincterotomy;EST)7)8),現在ではその手技も確立され,更には,経口的胆管内視鏡検査法(PCS)9)10),電気水圧式砕石法(EEL)11)12),内視鏡的逆行性胆道ドレナージ法(ERBD)13)~15)などの導入によって,治療面での適応は開発当時とは比較にならないほど拡大されてきていると共に,本法の胆・膵疾患に対する診断面での応用も可能となり盛んに試みられている.

 一方,開発後約10年を経過し,本法術後の予後検討がある程度可能となり,胆道疾患に対するESTの妥当性をその長期予後よりretrospectiveに検討しようとする試みもみられ16)17),第24回日本消化器内視鏡学会(横浜)では“十二指腸乳頭括約筋切開術の長期予後”という主題でパネル・ディスカッションが行われた18)

内視鏡的膵液・胆汁採取とその診断的展開

著者: 原田英雄 ,   田中淳太郎 ,   三宅啓文 ,   三木洋

ページ範囲:P.1197 - P.1204

 内視鏡的純粋膵液および胆汁採取は,内視鏡的膵胆管造影が臨床の場に導入されて間もなく,神津および筆者によって始められた.

 純粋膵液に関する研究は,その後多方面にわたって発展の道をたどってきた.すなわち,①細胞診への応用,②CEA(carcinoembryonic antigen),POA(pancreatic oncofetal antigen)など膵癌の早期診断のための腫瘍マーカーの検索,③膵外分泌生理研究への応用,④膵外分泌機能検査への応用,⑤膵液の生化学的分析およびprotein plugの形態学的検討による慢性膵炎の病態生理に関する研究,⑥Protein plugの内視鏡的吸引除去による慢性膵炎の治療に関する研究,などが主たるものである.それと対象的に,純粋胆汁の生化学的分析に関する研究は極めて少ない.以下,過去10年間の内視鏡的膵液・胆汁採取に関する研究のうち,臨床に直接関係深いものを中心に述べる.

内視鏡的逆行性胆管ドレナージ法

著者: 田中義憲 ,   多田正大 ,   中島正継 ,   藤本荘太郎 ,   今岡渉 ,   吉田俊一 ,   小林正夫 ,   安田健治朗 ,   池沢健男 ,   吉中正人 ,   山口勝通 ,   川本一祚

ページ範囲:P.1205 - P.1212

 胆道疾患の臨床において閉塞性黄疸の問題は大きい.胆道が腫瘍や胆石により機械的に閉塞された状態が長く続くと多くの障害が発現する.胆道内圧の上昇による肝実質障害,胆汁成分の欠如による消化吸収障害,血中へ漏出した胆汁色素の各種臓器への沈着による肝・腎などの機能障害などである.これらの障害は外科的処置の後の経過に重大な影響を与える.したがって,閉塞性黄疸に対しては早期診断と共に可能な限り早い時期に減黄術の処置が必要となる.

 現在行われている減黄術には外科的な内・外胆汁瘻造設術以外に経皮的胆管ドレナージ(PTCD)および内視鏡的な外瘻術として経乳頭的にdrainage tubeの挿入を行い,経鼻的にそのtubeを維持するnaso-biliary drainageが施行されている.術後の死亡率の点で外科的ドレナージには問題が多く,現在最もよく行われるのはPTCDの手技である.PTCDについては超音波診断装置の導入により,安全で確実なドレナージ法として確立されている.しかし,この方法はあくまで外瘻術であり,長期にわたる場合は患者の負担も大きい.

急性閉塞性化膿性胆管炎に対する内視鏡的緊急胆管減圧法―胆管内カニュレーションを主体とする方法

著者: 池田靖洋 ,   吉本英夫 ,   田中雅夫 ,   松本伸二 ,   伊藤英明 ,   木村豊

ページ範囲:P.1213 - P.1222

 急性閉塞性化膿性胆管炎(acute obstructive suppurative cholangitis,以下AOSC)は,原因のほとんどが総胆管結石の嵌頓であるにもかかわらず,その死亡率は保存的治療で100%,手術的胆道ドレナージで25~88%1)~13),経皮経肝胆道ドレナージでも17%14),42.8%15)と極めて高く,より早急な,侵襲の少ない胆道減圧処置の必要性を示唆している.

 近年,筆者らが試みている内視鏡的緊急胆管減圧法は胆管内カニュレーションによる嵌頓結石の突き上げを主体とするもので,当初,内視鏡的乳頭括約筋切開術(以下,EST)後にAOSCを惹起した症例に試み劇的な効果を得たことが16),その後ESTの施されていない症例17にまで本法を展開させる動機となった.本稿ではAOSC12症例を対象に,内視鏡的緊急胆管減圧法の具体的手技と成績を中心に報告し,本法の特徴と臨床的意義につき述べたい.

内視鏡的逆行性胆道ドレナージ法

著者: 富士匡 ,   天野秀雄 ,   有山重美 ,   相部剛 ,   永富裕二 ,   前谷昇 ,   浅上文雄 ,   播磨一雄 ,   竹本忠良

ページ範囲:P.1223 - P.1230

 消化器疾患のなかでも,膵・胆道癌がここ数年,特にクローズアップされてきた.その背景にはERCPの普及や,各種画像検査法の開発,進歩など,胆・膵領域の診断面の多様な発展がまず挙げられる.しかし,今日においても,膵・胆道癌は早期の癌の発見が難しいため,切除率や術後の遠隔成績に向上がみられていない.したがって,これからも小さな膵・胆道癌の発見に向けて努力が重ねられなければならないことは言うまでもない.この目的に対しては,現在開発途上にある.超音波内視鏡や経口的膵胆管鏡の実用化が期待される.これらの新しい診断法のターゲットは膵・胆道癌の早期発見におかれていることは多くを言う必要はないだろう.

 一方では,現在,膵・胆道癌の大多数を占めている,あまりにも進行してしまった癌患者に対する治療のほうが,診療の現実面ではより大きな問題をかかえていると言えよう.しかしながら,今なお有効な化学療法もない現状においては,たとえ姑息的な治療法ではあっても,より有効で持続的な新しい治療法が開発されなければならない.既に,経皮経肝胆道ドレナージ(PTCD)が,閉塞性黄疸を伴う膵・胆道癌の術前の非観血的減黄術として,また,切除不能症例の永久的減黄術として,大きな効果を上げていることは周知の事実である.現在では,内科医にとってもPTCDが必須の手技となってきているが,これには熟達したテクニックと労を惜しまないアフターケアが必要である.しかし,PTCDは非観血的手技とはいえ,invasiveな手技であり,患者に与える負担が少なくない.

研究

胆道末端部の機能診断―胆道末端部運動波型のコンピューターによる分析

著者: 山田英明 ,   三谷栄時 ,   小林絢三

ページ範囲:P.1231 - P.1236

 胆道末端部の機能を正確に診断することは,生理学的ならびに病態生理学的にも極めて重要なことと考えられるが,方法論的に困難なこともあって,この方面の研究は比較的少ない.すなわち,主として外科領域において,術中に胆管内圧の測定や造影による所見1)~3),薬剤負荷による内圧の変動2),活動電位の測定3)などによって行われているのがほとんどと言える.しかし,近年,非観血的方法として,RIも含めたX線学的方法4)や内視鏡を用いた方法5)6)なども報告されるようになった.

 著者らは,1974年に感圧素子装置を用いて内視鏡下にヒトの胆道末端部運動の測定に成功し7),以後,症例を重ねることにより,胆道末端部機能が正常と考えられる症例では,胆道末端部は規則性を持った周期で,収縮弛緩運動を繰り返していること,それに対して胆・膵疾患を有する症例の胆道末端部運動は,周期,振幅に乱れを生じ,ときには全く周期性のみられない運動波型を示すものも存在することを報告した8)9)

胆道末端部の機能診断―内視鏡的直視下導出法による乳頭部筋電図を中心に

著者: 赤坂裕三 ,   中島正継 ,   川井啓市

ページ範囲:P.1237 - P.1242

 近年,消化管の形態学的診断の発達は目覚ましく,これと並行して消化管機能検査法にも新しい展開が生まれつつある.しかし,消化管の機能検査法はその目的・手技に応じて対象選定や精度検定など多くの検討項目を有するだけに,一般臨床の場に広く定着するまでには至っていない.われわれはこれまで幾つかの機能検査法を駆使して,消化管各臓器へのアプローチに取り組んできた1)~4).本稿ではこのうち胆道末端部の機能診断について述べる.

経口的胆管内視鏡検査法による胆道疾患の診断と治療

著者: 藤本荘太郎 ,   中島正継 ,   今岡渉 ,   吉田俊一 ,   小林正夫 ,   加藤元一 ,   徳田一 ,   田中義憲 ,   木本邦彦 ,   安田健治朗 ,   光吉靖夫 ,   白川和夫 ,   竹林政史 ,   山口勝通 ,   赤坂裕三 ,   岩破淳郎

ページ範囲:P.1243 - P.1250

 経口的胆・膵管内視鏡検査法(peroral cholangiopancreatoscopy;PCPS)は非観血的な胆膵管の観察を目的としたものであり,いまだ開発途上にあるとはいえ,消化器内視鏡学における最も新しい分野の検査法である1)~7).著者らは1975年よりオリンパス光学と共同で本法の開発に積極的に取り組み,まず大口径の側視型十二指腸ファイバースコープと,その鉗子孔を通過しうる直視型細径ファイバースコープの組み合わせによる親子スコープ方式胆膵管鏡について検討し,報告した3)~5)7).この方式は通常乳頭症例においても,胆・膵管両方の観察が行える利点があるが,径が制限されるために,先端彎曲装置や生検鉗子孔などの機構が盛り込めず,随意的な観察や種々の処置が行えないという欠点があった.

 一方,著者らは世界に先駆けて1973年より内視鏡的乳頭括約筋切開術(EST)を行い8),既に450例を数え,本法の有用性と安全性については再三報告してきた9)~12).主要観察部位を胆管に絞れば,ESTを応用することにより,先端彎曲機構・生検鉗子孔を備えた大口径ファイバーの総胆管への挿入が可能であり,経口的胆管鏡(peroral cholangioscopy;PCS)としてスライディングチューブ方式を考案し検討している13).本稿では,われわれのPCSの臨床的有用性について報告する.

Microtransducerによる内視鏡的胆・膵管内圧測定と乳頭括約筋機能検査

著者: 田中雅夫 ,   池田靖洋 ,   吉本英夫 ,   伊藤英明

ページ範囲:P.1251 - P.1256

 最近の内視鏡技術の進歩は目覚ましく,なかでも,内視鏡的逆行性胆・膵管造影法(ERCP)およびこれに関連した諸技術の発達は,胆道・膵疾患の診断,治療の両面に著しい進展をもたらした.ERCPの手技を応用した胆管・膵管の内圧測定もその1つであり,十二指腸乳頭括約筋をめぐる生理学的研究の分野で,非手術的な検索を可能にした点は画期的な進歩と言えよう.本稿ではmicrotransducer catheterを用いた内視鏡的胆・膵管内圧測定法の方法と成績を報告し,その臨床的意義について考察する.

座談会

ERCPの現況と将来(2)―技術の進歩と展開

著者: 久野信義 ,   丹羽正之 ,   岡野弥高 ,   土岐文武 ,   富士匡 ,   大橋計彦 ,   矢崎康幸 ,   島口晴耕 ,   小野美貴子 ,   牧猛 ,   高木国夫 ,   川井啓市

ページ範囲:P.1258 - P.1266

 川井(司会) 次にERCPの技術の進歩と展開についてですが,本号ではで乳頭切開,経口胆道鏡,内視鏡的逆行性胆道ドレナージ,それから,内視鏡的な膵液採取とその分析を取り上げます.

 変わってきた内視鏡的乳頭切開術への評価

 ご存じのとおり,内視鏡的な乳頭切開法は1973年に開発されたのですが,相馬智先生の所も同じかと思いますが,私たちこういう技術を開発したときに,現在ほど広く使われるとは全く思っていなかったんです.日本では外国ほどにはまだ普及しているわけではないのですが,それでも,もうあちこちの実地医家の先生も技術を習いたいというところまでいっているということです.

症例

十二指腸悪性リンパ腫と早期胃癌を合併した1例

著者: 上野淳二 ,   吉田明義 ,   宇山幸久 ,   高岡猛 ,   佐野寿昭

ページ範囲:P.1269 - P.1272

 十二指腸原発の肉腫は比較的まれで,わが国でも平滑筋肉腫の報告は多いが,悪性リンパ腫の報告例は少ない.われわれは十二指腸上部原発の悪性リンパ腫と,幽門輪部の早期胃癌を合併した1症例を経験したので報告する.

学会印象記

第7回国際消化器外科学会

著者: 古賀成昌

ページ範囲:P.1204 - P.1204

 第7回国際消化器外科学会は大会会長慈恵医大長尾房大教授主催のもとに,9月6日のopening ceremonyに続いて,7日から9日までの3日間,東京の新宿京王プラザホテルで盛大に開催された.参加者は日本人を含めて約1,200名で,このうち外国からの参加者は41か国約600名を数え,文字どおり国際色豊かな学会となった.諸外国からの参加者のうち,米国,西独,イタリア,スペインなどからの参加者が目立った.

 Scientific programとしては,invited lecture 3題,消化器外科のなかで主要課題である食道,胃,大腸の癌,門脈圧充進症などのpanel sessionの6題をはじめ,free paper session 342題,およびsmall group discussionを目的としたposter session,workshop,更に早朝からのbreakfast meetingなど,いろいろ工夫されたideaのもとに多数の発表と活発な討論が行われた.

一冊の本

Inflammatory Bowel Diseases

著者: 武藤徹一郎

ページ範囲:P.1222 - P.1222

 本書は1981年9月にエルサレムにおいて開かれたIBDに関する国際シンポジウムの抄録を集めたものである.このシンポジウムは,序文にもあるように,この方面の世界の権威ある研究者を一堂に集めて,3日間にわたり最新の情報,研究成果を交換し,IBDに関する知識と理解を更に深めようという目的で開催されたものである.出席者の顔ぶれをみてもJanowitz,Kirsner,Shorter,Yardleyらの著名な研究者がずらりと並んでおり,この方面に興味のある者にとっては出席できなかったのが残念な気がするに違いない.

 本書の内容は 1)New pathological concepts,2)Etiology,3)Pathogenesis,4)Management,5)New directions for future researchの5章に分かれており,合計26の抄録が収められている.細かい内容は省略するが,読み通してみると欧米の専門家たちのこの方向における動向の大略がつかめて興味深い.臨床的にはよりCrohn病の治療の比重が重くなっていることは明らかであり,etiologyに関しては1つの壁に突き当たっているように見受けられる.最後の章でKirsnerも指摘しているように,多種多様な最新の知識を総合することによって,IBDがよりよく理解され,その本態を解く鍵が見付かるのかもしれない.その意味でこのシンポジウムは大変重要な役割を果たしたのであろう.本書を読むことによってその一端を知ることができるのは,この方面の専門家にとっては大変意義深いことである.北欧の研究者が含まれていないこと,抄録集であるために,記述,タイプのスタイルが一致していないことが気になるが,内容から種々の情報を探し出すのに問題とはならない.1984年9月に再び同様な国際シンポジウムを,エルサレムで開催する意向であると序文にあるが,本書の内容をみると是非出席して直接にこの方面のスーパースターたちの話を聞いてみたい欲求にかられる.この方面の専門家には一読を勧めたい本である.

胃と腸ノート

大腸癌スクリーニングにおける便潜1血スライドの選択

著者: 小林世美

ページ範囲:P.1257 - P.1257

 われわれは従来,病院外来での大腸癌のスクリーニングに便潜血スライドシオノギを用いてきたが,アメリカで開発されたヘモカルトが近年輸入され,大腸癌のスクリーニングに登場している.一体どちらを使えばよいかと迷ってしまうのが現場の声のようだ.

 便潜血スライドシオノギは,大腸癌のスクリーニングのために研究されてできたものではない.一方ヘモカルトは,大腸癌のスクリーニング法として1967年のGreegrらに始まる米国の研究者の多年にわたる研究の成果として登場した.では便潜血スライドシオノギは,今後不要になってしまうのだろうか? 否,これもまた,われわれの病院での診療には欠かせない長所がある.シオノギスライドは,AとBから成る.Aはオルトトリジンで,感度は約10万倍,Bはグアヤックで,感度約2万倍である.大腸癌のスクリーニングには,グアヤック法が最適と言われる.オルトトリジンは感度が鋭敏すぎる一方,不安定であり,欧米では現在使われていない.

Shinya式大腸ファイバースコープ(2)―横行結腸より上行結腸への挿入法

著者: 岡本平次 ,  

ページ範囲:P.1267 - P.1267

 横行結腸への挿入にあたっては,まず前号で述べたright turn shortening法で形成された体外のαループを解除しなければならない.そのためには,ファインダーの視野が変わらない程度に小刻みにスコープを出し入れし,同時に左回転をさせると体外のループを解除させることができる.また下行結腸からのスコープの逸脱も防止することができる.このようにしてスコープの直線化が得られると,脾彎曲部までの距離は肛門輪から40cm前後である.次に脾彎曲部を越えて横行結腸に進める,アップアングルをかけると横行結腸は筒状にとらえられる.その部でスコープを押し込まずに,反対に術者側へ引き戻して,余分のループを取り完全に直線化すべきである.この際肛門輪から5~10cmおりてくれば,伸展良好な柔らかい腸であり,下行結腸と横行結腸とのなす角度が鈍角となるため以後の操作は容易となる(Fig.3a).これに反し,例えばS状結腸憩室症の患者では,スコープの戻る長さが少ない.これは腸管の長軸方向への伸展不良があり,S状結腸でゆるいサインカーブを描いていることが多いからであろう(Fig.3b).このような患者では,横行結腸を進ませる際,再度ループを描きやすく,後述する助手による体外からのS状結腸の保持が必要となる.

入門講座 大腸疾患診断の考え方・進め方・11

読影(2)

著者: 市川平三郎 ,   中嶋義麿 ,   武藤徹一郎 ,   牛尾恭輔 ,   渡辺英伸

ページ範囲:P.1273 - P.1281

潰瘍性大腸炎

 <質問>生検組織よりみた潰瘍性大腸炎の特徴,また各病期の特徴を教えてください.

 市川 最初に,生検と限らず,病理的にみた潰瘍性大腸炎の特徴を,渡辺先生から各病期の特徴を含めてお話しください.

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欧文目次

ページ範囲:P.1177 - P.1177

海外文献紹介「単離G細胞のガストリン分泌に対するアミノ酸取り込みと脱炭酸の重要性」

著者: 田中雄二郎

ページ範囲:P.1184 - P.1184

 Importance of amino acid uptake and decarboxylation in gastrin release from isolated G cells: L. M. Lichtenberger et al. (Nature 25: 698~700, 1982)

 血中ガストリン値の食後の上昇は主として蛋白質,特にそれに含まれるアミノ酸の刺激によるとされているが,in vivoの実験成績は一様でない.われわれは単離したネズミのG細胞を用いて,ガストリン分泌刺激に関するアミノ酸の役割を検討した.

海外文献紹介「一般飲料による胃酸分泌刺激効果の比較」

著者: 白井孝之

ページ範囲:P.1242 - P.1242

 Relative stimulatory effects of commonly ingested beverages on gastric acid secretion in humans: K. NcArthttr, D. Hogan and JI. Isenberg(Gastroenterology 83; 199~203, 1982)

 消化性潰瘍の患者はしばしばコーラ,コーヒー,アルコール飲料を摂取しないよう指導されているが,9種の一般飲料の胃酸分泌に対する効果を調べてみた.

書評「Atlas of X-ray Diagnosis of Early Gastric Cancer New 2nd Edition」

著者: 毛受松寿

ページ範囲:P.1230 - P.1230

 既に本書の第1版は1966年に英語版として発刊され,ドイツ語,スペイン語,イタリア語に翻訳されて,早期胃癌の概念の紹介とX線診断の手引きとして多大の貢献をしてきました.

 今回第2版が再び白壁彦夫教授を中心として,斯界の中心的立場にある人々による新しい企画のもと,この15年間の経過中に得られた進歩を踏まえ,順天堂大学,国立がんセンター,癌研病院,東京都がん検診センターそのほか多くの施設の協力を得て,面目を一新したものとして刊行されました.

編集後記

著者: 原田英雄

ページ範囲:P.1282 - P.1282

 ERCPが大井,高木らによって開発されて以来13年,その発展ぶりを樹木の発育に例えれば,幹の順調な成長もさることながら,次々と立派な枝を張り出して見事な大木になりつつある.前号がERCPという幹の成長の記録とするならば本号はその幹から派生した枝の発育ぶりの記録と言えよう.

 ERCP開発後数年のうちに内視鏡的膵液・胆汁採取法,内視鏡的乳頭切開術,胆道末端の内視鏡的機能検査法(感圧素子法・筋電図法),胆・膵管内視鏡検査法などの検討が次々と開始され,その後また数年のうちに内視鏡的胆・膵管内圧測定法,内視鏡的胆道ドレナージ法の検討が始められたが,その発展ぶりは真に目をみはるものがある.乳頭切開術,胆道ドレナージ法のごとく改良を重ねて,既に臨床の場で重用されているものもあるし,膵液・胆汁採取法,胆道末端機能検査法,胆・膵管内圧測定法,胆・膵管内視鏡検査法のごとく臨床応用を目指して研究中のものもある.これらのほとんどのものの開発がわが国で着手されたことは誇りとしてよいであろう.

基本情報

胃と腸

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1219

印刷版ISSN 0536-2180

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