文献詳細
今月の主題 胃の隆起性病変(polypoid lesion)―その形態と経過
主題
Ⅱa-subtypeの形態と経過および臨床病理学的特異性について
著者: 福地創太郎1 望月孝規2
所属機関: 1虎の門病院消化器科 2日本専売公社東京病院検査科
ページ範囲:P.407 - P.413
文献概要
近年,このような境界領域性病変について,その本態や癌化の可能性が論議されるようになった.それらの病変は腺腫と呼ばれたり,異型上皮巣と呼ばれたりしているが,その範疇や定義が明確でないため,必ずしも同一の病変を取り上げて問題を提起していることにならず,いろいろな混乱が生じてきている.例えば,最もよく用いられている異型上皮の語の中の異型という概念は病理組織学的なものであり,個々の細胞ないしその形成する構造が本来のものと異なっているという状態を示し,厳密には高度から軽度に至るまでの程度を付記して表されている.そういう状態を示す上皮としては,悪性腫瘍細胞から変性などによる非腫瘍性の上皮の変化に至るまで様々な状態が存在する.それゆえ,厳密には良性悪性境界領域の異型上皮巣と言うべきであろうが,この異型についての病理組織学的判断の個人による違いのために,特に生検診断においては,いろいろの種類のものがこの名の中に取り込まれるおそれがある.特に,生検診断学的なGroup分類のGroup Ⅲというのは,診断する人により,あるいは試料により,判定が一致しないので,これをもって直ちに単一の病変であるⅡa-subtypeと同一なものであるとは言えない.Ⅱa-subtypeの診断過程について述べると,まず内視鏡的観察によりその診断が下され,適切な生検組織試料の組織学的所見によって裏付けられ,更に厳密なコントロールの下にfollow-upされるのである.これらの手続きのなかで診断が誤っていたり,あるいはこの範疇に入らぬものを,相当数見出し除外することができた.
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