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文献詳細

雑誌文献

胃と腸17巻5号

1982年05月発行

文献概要

今月の主題 sm胃癌の問題点(3)―臨床と病理 主題

sm胃癌の病理―特に肉眼所見と組織形態との対比

著者: 廣田映五1 山道昇1 板橋正幸1 北岡久三2 丸山圭一2 平田克治2 小黒八七郎2 山田達哉3

所属機関: 1国立がんセンター研究所病理部 2国立がんセンター病院外科 3国立がんセンター内科放射線診断部

ページ範囲:P.497 - P.508

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 sm胃癌とは,言うまでもなく胃癌の深達度がsm,すなわち癌浸潤が胃粘膜下層までに達しているが固有筋層には達していない胃癌を言う.これは早期胃癌の範疇に入り,癌が粘膜内にとどまる(深達度m)早期胃癌と比較して一段と深達度の深いものである.手術後の予後成績からみても深達度smの早期胃癌はmの早期胃癌がほぼ100%の10年生存率を示すのに対し,10%ほど低率である1).この予後良好なm胃癌とsm胃癌とを術前に鑑別が可能となれば,少なくともm胃癌に対する新しい治療法が飛躍的に進歩するであろう.なぜならば,深達度mまたはsm胃癌の一部の例に対する比較的保存的な外科的治療が試みられるようになるであろう.また内視鏡的治療法2),ならびにレーザー光線による焼灼法3),化学療法4),放射線治療など種々なる治療法もこの種の早期胃癌に対して適応となる可能性があるからである.したがって早期胃癌のうちsm胃癌の特徴的肉眼所見や他の様々な情報が得られるならば,sm胃癌の診断は容易となるであろう.そのためにはsm胃癌の肉眼所見と組織学的所見とを対比することにより,sm胃癌診断のための基礎的資料を得る必要がある.したがって現時点において,術前に把握しうる諸々の情報から,比較的客観性のある所見を取り出して,それらを幾つかの所見に整理し,sm胃癌と対比することが重要なことであると思われる.一方sm胃癌の診断に際してpm胃癌以降の進行癌との対比も必要となることは当然である.しかし,主に粘膜面から得られる所見のみでは,sm胃癌とpm胃癌とを明確に鑑別する手法はないとされている5).また術前診断時や肉眼所見から,胃癌の症例が深達度smかpmかと議論になる症例では外科的治療法が主なる適応となるので,新しい治療のための対象とならない.したがって本稿では,早期胃癌のうち,深達度mや,sm胃癌でも微小範囲に粘膜下浸潤がみられる症例などと,かなりの量としてsm浸潤を既に有するsm胃癌とがある程度区別できないかどうか,という視点からsm胃癌を検討することにした.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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