今月の主題 小腸X線検査法の進歩
主題
小腸二重造影法の適応―従来の経口法,圧迫法と二重造影法の比較
著者:
牛尾恭輔1
石川勉1
鈴木雅雄1
村松幸男1
高安賢一1
森山紀之1
松江寛人1
笹川道三1
山田達哉1
市川平三郎1
所属機関:
1国立がんセンター放射線診断部
ページ範囲:P.857 - P.869
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二重造影法が胃と大腸における微細・微小病変の診断を飛躍的に高め,変形の診断学という学問を大系づけたことは,周知のことである.一方,小腸ではこれまで,バリウムを経口的に服用させた後に,胃より流出するバリウムで小腸係蹄を追跡し,これに適時,圧迫を加えて検査する方法(経口法および圧迫法)が行われてきた.しかし,中村1),小林2)らによって,経ゾンデ法による小腸二重造影法が開発および理論化され,その後次第に広く行われるようになった.その結果,小腸病変の発見が増え,このことがまた小腸疾患への関心を高めるといった相乗作用を起こし,その成果は腸結核とクローン病の研究に著しく認められる3)-6).ところで,小腸のX線検査は大腸のように,二重造影法のみで満足すべき成績が得られるか否か?従来の経口法と圧迫法はその価値がなくなったのか?価値があるとすればどのような場合か?など経口法,圧迫法と二重造影法との比較検討は,いまだ十分に整理し尽されているとは思われない.したがって本稿では,小腸の器質的疾患に対する微細診断の立場から,従来の経口法,圧迫法と二重造影法の利点,欠点について述べる.
小腸の解剖学的特徴とX線像
X線診断は形態の診断を主目的としている以上,病変の形態のみならず,病変が存在する局所の解剖,更には臓器全体の解剖についてX線学的に把握すること,すなわちX線解剖を基礎としている.したがって病変の形態診断は,このX線解剖の十分な認識のうえに立脚して行われるべきであろう.