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文献詳細

雑誌文献

胃と腸17巻8号

1982年08月発行

文献概要

今月の主題 小腸X線検査法の進歩 主題

びまん性小腸疾患のX線診断―経口法とゾンデ法二重造影法との対比

著者: 渕上忠彦1 八尾恒良2 今村健三郎1 岡田光男1 鶴田修1 下田悠一郎3

所属機関: 1九州大学医学部第2内科 2福岡大学医学部第1内科 3九州大学医学部放射線科

ページ範囲:P.885 - P.895

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 経口的小腸X線検査は簡易ではあるが,得られる所見は複雑多岐であり,時間の経過に従って刻刻変化するため,微細病変の診断は極めて困難である.斉藤1)は,小腸のX線検査に当たっては胃潰瘍のNischeを発見するごとき,単純でしかも決定的所見を得ることは初めから望み得べくもなく,常に機能的・器質的変化を総合的に観察する必要があると述べている.しかし,白壁・市川ら2)は,腸結核について,術後像と合わせて検討し,機能面を除いて恒存する管腔変形から,器質疾患の診断に精力を傾けた.

 ゾンデ法による小腸二重造影法の最大の利点は全小腸が連続して描出され,遮断剤の注射により蠕動の影響を除き粘膜面の微細な凹凸を描出して器質的異常を描出できる点にあると思われる.小腸二重造影法の歴史は古いが3),ゾンデ挿入,造影剤注入などにわずらわしさがあり,また器質的小腸疾患が少ないこともあり,あまり普及しなかった.本邦において,1974年に中村ら4),小林ら5)により経ゾンデ法による小腸二重造影法が短時間で検査を終了でき,しかも全小腸の二重造影像が得られ,器質病変の優れた描出能が得られるとの利点が報告された.ほぼ時を同じくして,クローン病が注目を集める時代が到来し,以後腸結核との鑑別を中心として小腸二重造影法は飛躍的に進歩,普及した6)7).術中内視鏡像,術後小腸造影像との対比により,微細病変の診断も相当に可能となった.しかしながら逆に,ほぼ全小腸にわたるびまん性,連続性の病変を有する疾患(以下,びまん性小腸疾患)のゾンデ法二重造影法によるX線診断についてはまだ十分な検討がなされていない.更に,経口的小腸X線検査においては正常像の検討が詳細になされているが8)9),ゾンデ法小腸X線検査における正常像の検討はほとんどなされていない.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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