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胃と腸ノート
球部内反転法による胃癌の十二指腸浸潤の診断
著者: 小西敏郎1 田島強2
所属機関: 1都立駒込病院外科 2同内視鏡診断科
ページ範囲:P.1028 - P.1028
文献購入ページに移動本法を術前に施行して十二指腸浸潤の有無を検討した症例で手術にて切除できたのは,治癒切除9例,非治癒切除1例の計10例で,これら10例について術前診断と切除標本での十二指腸浸潤の有無を比較検討してみた(Table1).症例1,2および8の3例は球部内反転法にて十二指腸への癌浸潤を診断できたが,症例7と9の2例は球部内反転法にては十二指腸浸潤(+)の診断ができなかった.なお組織学的に十二指腸浸潤の有無を検討する際には西らの提唱による胃・十二指腸境界線を判定の基準としたD.以下2症例を供覧する.症例1:MACのBorrmann4型の胃癌症例で胃X線検査では十二指腸への浸潤がないと診断したが,球部内反転法にて幽門輪周囲がボッテリと隆起しており,十二指腸への浸潤が1cmぐらいあると診断した(Fig. 2).切除標本では十二指腸の粘膜下層と漿膜下層に約5mmに及ぶ浸潤が認められた.症例8:AのBorrmann2型の胃癌症例で胃X線検査で球部に陰影欠損を認め癌浸潤は幽門輪を越えると診断した.球部内反転法にても幽門輪を越えるRandwallの一部を認め(Fig. 3),この部を生検すると癌陽性であった.切除標本でも胃・十二指腸境界線を越えて粘膜下層で8mmの長さの十二指腸浸潤を認めた.
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