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文献詳細

雑誌文献

胃と腸18巻1号

1983年01月発行

文献概要

胃と腸ノート

アメーバ性大腸炎と潰瘍性大腸炎の鑑別診断

著者: 小林世美1

所属機関: 1愛知県がんセンター第1内科

ページ範囲:P.32 - P.32

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 赤痢アメーバによる大腸炎は,本来日本にはない疾患と考えられ,過去の臨床ではあまりかえりみられなかった.ところが近年海外渡航が頻繁となり,感染して帰ってくる場合と,渡航歴がなくても国内で感染する可能性もあり,そのような患者に遭遇する可能性を身をもって経験した.最近の国内でのアメーバ性腸炎の報告例でも,渡航歴のないものが散見される.しかも直腸だけを侵すことが多いので,特に潰瘍性大腸炎の直腸型として扱われることがあり,欧米の文献でも,初めにアメーバの詳しい検索をして,両者の鑑別をしっかりしておかなければいけないことを強調している.そのことを十分承知しながらも,筆者は最近苦い経験をした.潰瘍性大腸炎として長く治療し,初診から2年半後に初めてアメーバを検出した例を経験し,ここに改めて潰瘍性大腸炎類似患者の診療の初期に,詳しい糞便検査や病巣の擦過などによるアメーバの証明,あるいはアメーバ性病変の確実な否定の必要性を痛感した.症例を紹介しよう.

 41歳の男性で,職業は調理士.主訴は血性下痢,1978年2月に発症,某医で潰瘍性大腸炎の診断を受け,その後,数ヵ所の医院をまわったが症状は改善せず,1979年7月13日当院を受診,その当時は排便回数は約5回,直腸指診で血液を認めた.一般検査では特に異常を認めず,検便でアメーバを認めなかった.海外渡航歴は当院受診前は全くなく,それ以後1980年2月と1981年8月の2回台湾へ行っているが,発症とは関係がない.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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