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文献詳細

雑誌文献

胃と腸18巻1号

1983年01月発行

Coffee Break

早期膵癌に思う―早期胃癌をかえりみて―

著者: 高木国夫1

所属機関: 1癌研病院・外科

ページ範囲:P.90 - P.90

文献概要

 ERCPが1969年に大井らとわれわれにより臨床的に成功して,膵臓のX線撮影が可能となれば,早期胃癌なみに,膵癌の早期発見も夢ではなく,膵癌退治に希望が持てると当時思ったし,その後,ERCPで何とか,膵内に限局し転移のない癌(早期膵癌とも言うことができる)を発見しようと努力してきました.ERCPに初めて成功し,X線モニター上に造影された細い主膵管を見たときの感激は,この検査法に熟達した医師にとっても,生涯忘れえないほどのもので,他の検査法では味うことができないものと思います.われわれも初めてERCPに成功した症例は,10年以上経た現在でも,身近なものに感じています.ERCPに成功したときの感激と同時に,腹部の暗黒大陸とさえ言われた膵臓の疾患で,最も手強い膵癌にこの方法でアプローチできると感じないものは誰もいなかったでしょう.

 しかしその後,多くのERCPに対する経験を積んでいるうちに,いつの間にか,膵癌退治の夢が失われていってしまったのは,どうしたことでしょう.膵癌を早期に発見しようと努力したが,なかなか発見できないためか,ERCPで早期の膵癌を発見したと,喜んでいざ手術してみて,切除不能であったり,切除しえても数カ月で死亡したりの落胆の連続で,結局ERCPによる膵癌の早期発見は不可能だとあきらめてしまったものでしょう.全世界においても,ERCPに熟達した医師らも同じような目にあってきたものでしょう.どうして膵癌の早期発見ができないのだろうか,世界中のERCPを行っている医師の疑問だと思います.このように,なかなか発見が困難な早期膵癌がここ数年,報告されるようになって,誰しもどうして発見したのだろうという疑問がまず第一に浮かんでくるでしょう.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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