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文献詳細

雑誌文献

胃と腸18巻11号

1983年11月発行

文献概要

今月の主題 逆流性食道炎 主題

逆流性食道炎と裂孔ヘルニア

著者: 小林世美1 加藤文人1 春日井達造1

所属機関: 1愛知県がんセンター第1内科

ページ範囲:P.1141 - P.1146

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 胃および十二指腸液の食道への逆流によって起こる食道炎は,逆流性食道炎(reflux esophagitis)という呼び名で長く親しまれてきた.ところが同じ逆流が起こっても,食道粘膜に損傷の起こる場合と,起こらない場合があり,最近では逆流現象を胃食道逆流(gastroesophageal reflux;GER),これによって起こる疾病状態を胃食道逆流疾患(gastroesophageal reflux disease;GERD)と呼称するのが一般的となった1).その中にいわゆる逆流性食道炎が位置づけされている.それが更に進展した場合の食道潰瘍や狭窄,Barrett's esophagus,続発性の呼吸器疾患がGERDに含まれる.これらの疾患が,しばしば滑脱型裂孔ヘルニア(sliding hiatus hernia)を合併することから,その関連が長く議論されてきた.かつてはGERDが裂孔ヘルニアと密接に関連するとの考え方から“symptomatic hiatus hernia”と呼ばれたりしたが,近年,多くの臨床研究者は,下部食道括約筋(lower esophageal sphincter;LES)を胃食道逆流の主要な障壁と考え,裂孔ヘルニアとは直接の因果関係はないとの主張が常識化し,“symptomatic hiatus hernia”に代わって,GERDという語が優勢となった.

 筆者らは,この問題について主として文献的reviewによる考え方の推移をたどり,現在におけるGERDと裂孔ヘルニアに関する諸説を紹介し,われわれの若干の経験を織り混ぜて論じてみたい.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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