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文献詳細

雑誌文献

胃と腸18巻11号

1983年11月発行

文献概要

研究

大腸腺腫ならびに担癌大腸粘膜の杯細胞粘液組成について

著者: 沢田俊夫1 武藤徹一郎1 阿川千一郎1 斉藤幸夫1 安達実樹1 森田博義1 久保田芳郎1 杉原健一1 小西文雄1 上谷潤二郎1 森岡恭彦1

所属機関: 1東京大学医学部第1外科

ページ範囲:P.1235 - P.1245

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 臨床病理学的研究により大腸癌の多くが大腸腺腫を経て発生すると考えられている1)~3).大腸腺腫は様々な程度の異型度(dysplasia)を示し,Morsonら2)は軽度異型腺腫,中等度異型腺腫,高度異型腺腫に分類している.摘除されたヒト大腸腺腫の大部分は軽度異型腺腫であり,これらは組織学的に明らかな良性腫瘍性病変である.一方,高度異型腺腫は組織学的に粘膜内にとどまる癌(focal carcinoma)であり,中等度異型腺腫はその中間に位置していると考えられる4).従来の報告では大腸腺腫を異型度によらず,一括してその粘液組成を検討したものが多く,また,腺腫腺管上皮の杯細胞粘液と腺管の管腔縁(brush border)に観察される分泌物を同一に扱った報告もある.そこで本論文では,まず腺腫を異型度により分類し,その各々の異型度を示す腺腫腺管における杯細胞粘液組成の変化を観察,検討した.

 また,担癌大腸粘膜における粘液組成の変化をFilipeら5)6)はpremalignant changeを示唆すると述べ,一方,Isaacsonら7)はこの変化を二次的なものとして捉えている.癌と担癌大腸粘膜とはおそらく同一の発癌因子(carcinogen)にさらされたと推測できる.そこでこの担癌大腸粘膜の杯細胞粘液組成に変化が認められるのかどうかを,そしてまた,その変化がFilipeらの主張するようなpremalignant changeとしての特異性を持っているのかどうかを検討した.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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