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文献詳細

雑誌文献

胃と腸18巻2号

1983年02月発行

今月の主題 急性腸炎(1)―主として抗生物質起因性大腸炎

主題

偽膜性大腸炎

著者: 稲松孝思1 島田馨1 浦山京子1 安達桂子2 田中喜久子2 日野恭徳3 武藤徹一郎4

所属機関: 1東京都養育院附属病院内科 2東京都養育院附属病院細菌検査室 3東京都養育院附属病院外科 4東京大学医学部第1外科

ページ範囲:P.117 - P.124

文献概要

 抗生剤投与中に,腹鳴,腹痛,軟便,下痢などの下部消化器症状が少なからずみられるが,その大部分は投薬中止により速やかに改善する軽症例であり,臨床上重視されることは少なかった.しかし,ときに高熱,白血球増多を伴う激しい大腸炎症状を呈し,予後不良となる例のあることが古くから知られ,大腸を中心として広範な偽膜性の炎症所見を認めることから偽膜性腸炎と呼ばれてきた.

 1950年代には,抗生剤投与により腸管内に黄色ブドウ球菌が異常増殖し,そのエンテロトキシンにより偽膜性腸炎が引き起こされると考えられていたが,1970年代末に至って,Clostridium difficile(C. difficile)の病原的意義が明らかにされ,抗生剤投与→C. difficileの異常増殖→毒素産生→偽膜性大腸炎発症,といった図式が描かれるようになった.この間の病因論についての目覚ましい進歩に対する興味はともかくとしても,抗生剤が多用される今日,本症の臨床的意義は大きい.偽膜性大腸炎は,しばしば発熱を伴うため,発熱の真の原因が抗生剤投与であることに気付かれぬまま,更に種々の抗生剤を投与し,大腸炎を一層悪化させている症例が散見されるからである.適切な診断,治療により,本症の大部分は治癒させることができるものであり,臨床家にとって本症に対する認識は不可欠のものと思われる.本稿では自験例を中心として,抗生剤投与による下痢症―偽膜性大腸炎におけるC. difficileの役割,臨床像,大腸内視鏡像,治療成績などについて述べることにする.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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