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文献詳細

雑誌文献

胃と腸18巻2号

1983年02月発行

文献概要

今月の主題 急性腸炎(1)―主として抗生物質起因性大腸炎 主題

抗生物質による薬剤性大腸炎の臨床

著者: 多田正大1 田中義憲1 渡辺能行2 梶原譲2 傍島淳子2 川本一祚2 魚住玄通2 川井啓市2

所属機関: 1京都第一赤十字病院第3内科 2京都府立医科大学公衆衛生

ページ範囲:P.133 - P.143

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 治療目的で投与された薬剤による消化管の副作用として,重金属剤による口内炎にはじまり,消炎鎮痛剤やステロイド剤による胃・十二指腸潰瘍,強心剤や経口血糖下降剤,抗結核剤による悪心,嘔吐,食欲不振などの消化器症状の発現,KClによる小腸潰瘍などが従来より注目されてきた.最近では化学療法の進歩と普及に伴って,主として抗生物質に起因すると考えられる大腸炎が臨床上注目されてきており,新しいclinical entityとして確立されている.

 この抗生物質起因性大腸炎として,欧米の文献ではantibiotics associated colitis,drug induced colitis,pseudomembranous colitisなどの呼称で報告されている.本邦ではpseudomembranous colitisに対応する名称として偽膜性大腸炎の用語が一般的である.しかし抗生物質起因性の薬剤性大腸炎には必ずしも偽膜形成を起こさない急性の出血性腸炎の病態を呈する症例も決して少なくないことが最近明らかになっており,これらの一連の大腸炎に関する呼称が本邦のみならず,欧米でも,まだ画一的な名称は見当たらないようである.筆者らも抗生物質起因性の薬剤性大腸炎について,その病態より偽膜形成を来す腸炎(偽膜型)と急性出血,びらんを起こす腸炎(びらん型)に分類して報告したが,果たしてこの呼称がふさわしいものか否か,今もって迷っているところである.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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