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文献詳細

雑誌文献

胃と腸18巻2号

1983年02月発行

文献概要

Coffee Break

膵癌早期発見のきっかけ (1)

著者: 高木国夫1

所属機関: 1瘤研病院外科

ページ範囲:P.196 - P.196

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 ERCPが開発され,膵のX線写真が撮れれば,早期胃癌と同様,膵癌の早期診断も夢ではないと思われましたが,そう簡単に門戸を開いてくれませんでした.ERCP開発後10年してようやく膵内に限局し転移のない直径2cmの早期膵癌が見出されましたが,この症例は尿アミラーゼ値の一過性上昇がきっかけとなっていました(「胃と腸」15:637,1978).それまでは,膵癌の早期発見に何か目的をもってERCPを行ってはいませんでした.ただやみくもにERCPを行いましたが,その中から早期膵癌が見付かればと思っていたわけで,現今でもERCPで早期膵癌を発見しようとするには,何か目安となるものでスクリーニングして,ERCPにもって行くか,ただ漠然とするかで,結果に天地の差異が出てくるものでしょう.

 われわれがERCP開発後やみくもにERCPを行ってきましたが,どうしても早期膵癌を見出しえず,アミラーゼ高値例にERCPを行って初めて早期膵癌を見出しましたが,このたった1例の早期膵癌を徹底的に検討した結果,膵癌の早期診断という最も難しい問題の糸口が全く思いもかけない所からほぐれてきたものでした.燈台元暗しとはよく言われますが,膵癌の早期発見に,何か膵内や血中の特殊な酵素やCEAに類似したoncofetal pancreatic antigenのようなものが役に立つのではないかと,膵の専門家は検討していますが,まさか膵臓で最もよく知られたアミラーゼが役に立つとはわれわれも全く驚いたものでした.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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