icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

胃と腸18巻4号

1983年04月発行

雑誌目次

今月の主題 急性腸炎(2)―主として感染性腸炎 主題

急性感染性腸炎の病理

著者: 渡辺英伸 ,   堀向文憲 ,   岩渕三哉 ,   伊津野稔 ,   田中一雄

ページ範囲:P.333 - P.342

 急性感染性腸炎にはTable 1に示すような種々のものがあり,これらを鑑別しなければならない.現実には,これらと非感染性の急性腸炎,潰瘍性大腸炎なども鑑別対象となる.鑑別診断は患者の病歴や症状のほかに,病原体検査を含む一般検査,X線・内視鏡検査および病理形態学的検査を統合したうえでなされるべきである.

 しかし,実際にはどれかの,または二,三の検査所見で,ある疾患が疑われたり,診断が確定することが多い.本稿では,各種の急性感染性腸炎の病理形態学的特徴を主に記述し,これがどの程度急性感染性腸炎の診断に寄与できるか,また寄与しているかを考えてみたい.

感染性腸炎と潰瘍性大腸炎の鑑別

著者: 喜田剛 ,   田島強

ページ範囲:P.343 - P.352

 潰瘍性大腸炎の病因論として,最初に感染説が登場しており,細菌性赤痢,アメーバ赤痢,連鎖球菌などが取り上げられた.その後,感染説は潰瘍性大腸炎の病因としては顧みられなくなったが,実際の診療の場においては,かって,感染性腸炎と潰瘍性大腸炎の診断に多くの混乱がみられた.すなわち,松永のアンケートによる全国集計で,潰瘍性大腸炎症例を最初に診察した医師の診断名は,1957年の調査では,潰瘍性大腸炎17.7%,慢性・急性腸炎37.1%,赤痢17.6%と,誤診例が8割を越えており,そのうち,感染性腸炎と思われる診断が5割以上となっていた.1973年の調査では,潰瘍性大腸炎43.1%,慢性・急性腸炎19.3%,赤痢4.1%となっており,その間の潰瘍性大腸炎の診断の進歩がうかがわれるが,それでも誤診例が半数以上となっている.

 一方,感染性腸炎は,法定・届出伝染病に含まれるものを入れて,最近,著明に減少している.統計では1946年にコレラ1,245例,赤痢88,214例,腸チフス44,658例であったのが,1980年には,それぞれ22例,951例,294例となっている.したがって,潰瘍性大腸炎が赤痢などの感染性腸炎と誤診されることは少なくなっている.

ランブル鞭毛虫症,糞線虫症

著者: 山下正策 ,   尾辻義人 ,   政信太郎 ,   橋本修治

ページ範囲:P.353 - P.360

 ランブル鞭毛虫症(Giardiasis,lambliasis)

 1.はじめに

 ランブル鞭毛虫(Giardia lamblia)は世界中に広く分布し,特に温暖で衛生状態の悪い地域ではヒトにかなり高率に寄生している.その栄養型はヒトの十二指腸や小腸上部および胆道系に寄生し活発に運動し2分裂で増殖している.

腸アメーバ症

著者: 坂本清人 ,   下田悠一郎 ,   渕上忠彦 ,   岩下明徳

ページ範囲:P.361 - P.372

 近年,大腸ファイバースコープが普及し,潰瘍性大腸炎をはじめとする慢性炎症性大腸疾患,あるいは他の感染性腸炎や薬剤性腸炎などの急性出血性腸炎が多数発見されるようになってきたが,これらの疾患の鑑別診断の1つに腸アメーバ症を考えなければならなくなってきた.

 以上のような見地から古くは感染症学者の手にゆだねられていた本症の研究も,現在ではX線・内視鏡学的立場からのアプローチが要求されるようになってきたのである.

 腸アメーバ症は本邦では極めて少ない疾患であるが,自験例ならびに本邦報告例の集計から本症の臨床像を明らかにし,主としてその診断面について検討を加え,欧米の文献を参考にしつつ考察を試みた.

主題症例

X線所見が診断の手掛かりとなった腸チフスの3例

著者: 今村健三郎 ,   八尾恒良 ,   渕上忠彦 ,   岡田安浩 ,   古賀安彦 ,   谷啓輔 ,   下田悠一郎

ページ範囲:P.387 - P.392

 公衆衛生の向上および化学療法の進歩などにより,近年腸チフスの罹患率は著明に減少している.しかしながら,散発性の腸チフスの発生は必ずしも極めてまれなものではなく,不明熱や腹痛の鑑別診断の1つとして念頭に置くべきものと思われる.その臨床像や病理学的特徴については成書にも詳細な記述がなされているが,X線所見の特徴に関する記載は極めて乏しい.本稿においては,最近われわれが経験した3例の腸チフスの,主としてX線所見の特徴について報告する.

アニサキス幼虫による急性腸炎

著者: 石倉肇 ,   菊地由生子 ,   石倉浩

ページ範囲:P.393 - P.397

 van Thiel(1960)によって発見命名されたanisakiasisは比較的新しい寄生虫性疾患で,larva migransという人獣共通疾患に属することは周知のとおりであり,本邦では1964年浅見の初報告以来急速に研究が進み,その研究は世界的水準を超え,国内普及も高度で発症数も各国の症例数をはるかに凌駕した.この疾患は,他の従来の寄生虫症と異なり,parasiteであるAnisakislarvaeが人体内で発育せず,幼虫からみて人体はゆきどまり宿主であるところに特徴がある.一般感染症でも同じであるが,特に寄生虫症ではhost parasite relationshipを考慮すべきで,このことをアニサキス症で考えると,幼虫の持つeosinophil chemotactic factorと,感染宿主(人体)の生化学的免疫病理学的生体反応との交錯した像として病態が現れる.

 さて,従来のわれわれの多くの研究でも明瞭であるが,アニサキス症は胃アニサキス症と腸アニサキス症に分けられ,両者は更に激症型(fulminant form;急性)と緩和型(mild form;慢性)とに分けられる.今回は本特集の趣旨に沿って“急性腸炎”のカテゴリーに入りうる腸アニサキス症激症型の症例をもとに,その臨床所見・診断法は概説し,病理組織学的所見をやや詳述して,ほかの特異性腸炎と異なる特徴的所見について述べてみたい.

Yersinia enterocoliticaによる急性回腸末端炎の2例

著者: 山崎節 ,   小川清 ,   坪田順昭 ,   坂本清人 ,   小田辺茂雄 ,   豊島里志

ページ範囲:P.399 - P.406

 Yersinia enterocolitica(以下 Y. e.)による腸管感染症は,1964年のCarlssonらの報告以来,急性回腸末端炎の原因として注目され,最近本邦でもその報告が散見されるようになった.しかしながら,本邦ではそのX線所見について詳細に述べているものは少なく,また回腸末端部の内視鏡所見についての報告は,欧米を含めても見当たらない.今回われわれは,内視鏡検査までしえたY.eによると考えられる急性回腸末端炎を2例経験したので報告し,主としてそのX線・内視鏡所見について考察を加えた.

Campylobacter腸炎の6例

著者: 林繁和 ,   小池光正 ,   中村常哉 ,   中澤三郎 ,   吉井才司

ページ範囲:P.407 - P.411

 1977年Skirrowによる新しい選択培地の開発以来,Campylobacter jejuniの糞便からの培養が容易となり,本菌による腸炎の重要性が指摘されるに至り,近年わが国を含め世界的に注目されるようになった.一方,ときを同じくしてわが国では薬剤性腸炎や虚血性腸炎に対する関心の高まりから出血時に緊急に大腸内視鏡検査が施行されるようになり,このcampylobacter腸炎もかなりの頻度で血便を呈することから内視鏡で大腸病変が観察される機会も多く,他疾患との鑑別という点でも重要視されるようになった.当院では1981年5月よりC.jejuniの培養を始めて以来1年4カ月間に53名の患者に本菌を検出しているが,このうち血性下痢を主訴とし緊急内視鏡検査で病変の認められた5例と大腸ポリペクトミー後の経過観察中に病変の認められた1例の計6例につき,その大腸内視鏡像を中心に報告する.

多彩なX線・内視鏡所見を呈したアメーバ腸炎の1例

著者: 日高雄二 ,   岡庭弘 ,   原田敏雄 ,   宮川静一郎 ,   増田剛太 ,   加勢田美恵子 ,   田島強

ページ範囲:P.413 - P.417

 われわれは注腸造影検査,大腸内視鏡検査において多彩な所見を呈したアメーバ腸炎の症例を経験したので報告する.

内視鏡的に経過観察しえた赤痢アメーバ症の1例

著者: 中野貞生 ,   山崎雅彦 ,   横田広子 ,   下田忠和

ページ範囲:P.419 - P.422

 本邦では赤痢アメーバ症の発生頻度は減少の一途を辿り,“忘れられた感染症”とまで言われるほどになった.しかし,病態が軽症から重篤なものに至るまで様々であることや,他疾患との鑑別,殊に潰瘍性大腸炎との鑑別が困難な例が散見され,大腸疾患の鑑別診断上重要な疾患である.われわれは確定診断に1年以上も要した赤痢アメーバ症を経験したので報告する.

研究

急性浮腫性回腸炎27例の臨床像・X線像についての検討

著者: 南部匠 ,   谷啓輔 ,   藤原侃 ,   木下壽博 ,   佐田増美

ページ範囲:P.373 - P.379

 われわれは日常診療にて多くの腹痛の患者をみているが,その中に強い腹痛にて急に発症し,小腸X線検査にて回腸に一過性の粘膜ひだ腫脹像をみる一群のあることに注目してきた.このような急性腸炎についてはいまだに報告がない.今回その27例について臨床像とX線像を中心として報告する.

コレラ空腸の形態学的研究―内視鏡的,光顕・電顕的検討

著者: 森下鉄夫 ,   朝倉均 ,   宗像良雄 ,   土屋雅春 ,  

ページ範囲:P.381 - P.386

 コレラはコレラ菌(Vibrio cholerae)の腸内感染によって起こる急性感染症であり,大量の水様下痢,脱水症状,アシドーシスを呈する典型的小腸性下痢疾患である.

 ヒトコレラ腸症の急性期に空腸内視鏡検査を行い,空腸生検材料を光顕的・電顕的に検索し,下痢の機序における空腸粘膜の形態学的変化の意義を検討した.

大腸腺腫および癌の病理形態学的研究―構造異型のmorphometricな分析による良性・悪性の鑑別について

著者: 東郷實元 ,   中村恭一

ページ範囲:P.423 - P.432

 病理組織学的な腫瘍の良性・悪性の診断は,細胞水準での細胞異型と組織水準での構造異型との総合的判断によって行われている.

 異型とは“正常からの形態的なかけ離れ”を意味するものであるから,われわれが病理組織学的に腫瘍の良性・悪性の診断をするということは,ある正常のパターンからのかけ離れの程度を経験的あるいは直観的に認識して,良性あるいは悪性に類別するという手続きを行うことである.しかし,本来異型の程度というものは連続的であるので,実際には良性・悪性境界領域という判断の難しい異型が生じてくる.腫瘍の病理組織診断においては,客観的にこの良性・悪性境界領域の幅を狭めることが常に要請されている.

症例

腸型Behçet病と考えられる1手術例

著者: 前田正司 ,   池沢輝男 ,   中神一人 ,   早川直和 ,   仲田幸文 ,   城卓志 ,   佐藤泰正 ,   飯田稔 ,   二村雄次

ページ範囲:P.433 - P.437

回腸潰瘍より下血を来したBehçet病不全型と思われる症例を経験したので報告する.

Coffee Break

膵癌早期発見のきっかけ (3)

著者: 高木国夫

ページ範囲:P.379 - P.379

 早期膵癌の発見のきっかけがアミラーゼ高値であったものが1978年から1981年までの4年間に6例になりました.6例中3例はアミラーゼ値が正常範囲より軽度上昇してたものです.アミラーゼ値についてよく質問されます.アミラーゼ高値とは,正常値からどのくらい高かったものですか?高値が持続的ですか?間歇的ですか?とアミラーゼ値の消長について,何か特徴的なものはないか,あれば良いという考え方に立っているものと思います.私はそういう質問には,とにかく正常値から一度でも上がったものは全部ERCPを行うべきであると極端なことを言っています.なぜかと言いますと,世界で血眼になって早期膵癌を探していて見付からないものを,尋常な方法で見付かるわけがないでしょう.全く極端なことだと思われるようなことを私どもは4年間やって見付け出してきたわけであって,やはり胃癌の早期発見と同様に,ERCPの検査をできるかぎり幅広く,多く行うことに通じています.

 このような考え方の上に立って,先ほどのアミラーゼ高値に関して,高値例に全部ERCPをという答になったわけです.ERCPを行っている先生は“アミラーゼ高値例全部にERCPはとても無理だ”とよく言われます.ERCPを全部にできないなら,中途半端なら,やらないほうが良いし,膵癌の早期発見はあきらめるべきでしょう.全部になんとかERCPをやろうと努力して,初めて目的の早期膵癌を手中にすることができるものです.

追悼

故Heinkel教授を偲んで

著者: 丸山雅一

ページ範囲:P.438 - P.439

 Prof. Dr. med. Klaus Heinkel(4.2.1921-21.7.1982).Prof. Henningの高弟として,また世界消化器病学会,内視鏡学会の重鎮としてあまねくその名を知られた人である.そして,日本を,日本人をこよなく愛した人だった.Heinkel教授の訃報がもたらされたのは昨年7月末のことである.教授との初めての出会いからその死までの10年間,折にふれてはStuttgartを訪ね,その温厚な人柄のなかに隠された仕事に対する厳しい闘志に魅せられ続けてきた一人として,私はここに教授を偲ぶ一文を綴り,追悼の言葉にしたいと思う,

 “Heinkel倒る.再起不能か”との知らせが届いたのは1981年3月も末のことだった.それから2カ月後,私は偶然にもAntwerpで教授と再会した.13th International Congress on Stomach Diseaseの会場,しかも幸いなことに教授と私は同じシンポジウムに招かれていた.一見して病み上がりとわかる姿の教授は私と顔を合わせるなり,“おまえはきっとここに来ると思っていたよ.会えて本当によかった”と何度も繰り返すのだった.このとき,いつもとは違う教授の雰囲気に接した私は,“この人と共に過ごせる時間はそう長くはあるまい.”との予感に何とも言いようのない淋しさを感じたことを,今思い出している.夫人とのちょっとした口論の最中,腹部に激痛を感じたのが病気の発端だったこと,それが腹部大動脈瘤とわかり,破裂の寸前に手術を受けたこと,など教授は静かに淡々と語るのだった.そして最後に,“手術を受けるときになって,自分は神に祈ることなどしなかったよ.必ず生きて還えるという強固な意志,それは宗教を越えたものだからだ.”とつぶやいた教授の言葉の中に,この人がそれまで背負ってきた哀しみを視たような気がした.

--------------------

欧文目次

ページ範囲:P.331 - P.331

海外文献紹介「顕微鏡的大腸炎―慢性水様性下痢の原因」

著者: 杉原眞

ページ範囲:P.372 - P.372

 Microscopic Colitis―A Cause of Chronic Watery Diarrhea: JGC Kingham, DA Levison, JA Ball, AM Dawson (British Medical Journal 285: 1601~1604, 1982)

 6人の水様性下痢の患者が,小腸および大腸のX線・内視鏡検査では正常であったが,一見正常の大腸粘膜よりの生検で,microscopic colitis(顕微鏡的大腸炎)と診断された.

海外文献紹介「115例の早期食道癌の内視鏡診断」

著者: 小林世美

ページ範囲:P.406 - P.406

 Endoscopic Diagnosis of 115 Cases of Early Esophageal Carcinoma: Y Guanrei, H He, Q Sungliang, C Yuming (Endoscopy 14: 157~161, 1982)

 北京近郊の食道癌の高危険地域で,28,139人を対象として,細胞診,内視鏡,X線による集団検診を行い,115例の早期食道癌を発見した.男性64例,女性51例で,年齢は32歳から73歳までで,48%が50~59歳の間に分布していた.24例が外科手術を受け,全例ともリンパ節転移のない粘膜下層までの癌であった.残りの91例は,いろいろな理由で治療が行われず,19~42ヵ月にわたって経過観察された結果,早期癌と推定された.

海外文献紹介「小腸および大腸クローン病におけるdysplasia(前癌性変化)の組織像」

著者: 小林世美

ページ範囲:P.412 - P.412

 The Histologic Appearance of Dysplasia (Precarcinomatous Change) in Crohn's Disease of the Small and Large Intestine: S Simpson, J Traube, RH Riddell (Gastroenterology 81: 492~501, 1981)

 最近,長期間にわたるクローン病においても癌の発生が増加していると言われ,Weedonらは,対照群より20倍の大腸癌の頻度を計算している.癌を合併したクローン病でのdysplasiaの発生は以前から知られているが,詳しくは研究されていない.著者らは,シカゴ大学で経験された癌を合併した6例のクローン病患者すべてにdysplasiaを認めた.いずれの患者においてもdysplasiaは癌に隣接していた.4例では癌と離れた所にも認められた.その範囲は2例ではびまん性であり,2例では多中心性にみられ,残りの2例では局部的に存在していた.びまん性であった患者の1人では,2つの癌巣を有していた.dysplasiaの程度は,軽度からin situ癌にわたっていた.ある例では高度のdysplasiaからin situ癌を経ずに浸潤性癌への移行を認め,クローン病での癌は,潰瘍性大腸炎でみられるようなin situ癌を経ずに癌が起こりうることを示した.dysplasiaの所は,肉眼的には平坦またはポリープ様で,反応性変化とdysplasiaを見分けることはできなかった.

海外文献紹介「末端肥大症の患者における大腸ポリープ」

著者: 杉原眞

ページ範囲:P.412 - P.412

 Colonic Polyps in Patients with Acromegaly: I Klein, G Parveen, JS Gavaler, DH Vanthiel (Annals of Internal Medicine 97: 27~30, 1982)

 末端肥大症に大腸ポリープ,大腸癌の頻度が高いことを確かめるために,17人の患者で,大腸X線検査および内視鏡検査を行った.更に,26人の末端肥大症の患者の記録を調査した.

書評「高齢者の手術とケア」

著者: 相馬智

ページ範囲:P.418 - P.418

 私たちは現在高齢者社会の真っただ中にいる.今世紀ほど,これだけagingが問題になった時代もあるまい.agingの生理,病態,歴年齢とaging,機能そして精神障害,社会的背景などいずれをとらえても問題は大きい.この道の権威である山城先生が編者になって「高齢者の手術とケア」という本を上梓した.まさにタイムリーな企画と言える.

 高齢者の線を60歳か65歳に引くかを云々したのはわずか15年ほど前のことである.現在では専門外の私ですら平気で80歳の手術をしているのである.平気と言っては語弊がある.おっかな吃驚といったほうがよいのかもしれない.その矢先にこの本の出現である.むさぼるように通読した.高齢者に対して専門の行き届いたケアと,専門医の努力があれば,ここまでできるのかという驚きがまず頭の中に去来する.

編集後記

著者: 八尾恒良

ページ範囲:P.440 - P.440

 ごく最近まで感染性腸炎がX線,内視鏡診断の対象とされることは,極めてまれであった.その多くは臨床症状と糞便の細菌検査で容易に診断がつき,X線,内視鏡検査を行わなくとも十分な診療ができたからである.

 近年,細菌学の進歩で急激な臨床経過をたどるもの以外の感染性腸炎の原因が明らかにされ,形態学的診断がこれらの腸炎の診断に力を発揮する場が生まれてきている.

基本情報

胃と腸

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1219

印刷版ISSN 0536-2180

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?