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追悼
故Heinkel教授を偲んで
著者: 丸山雅一1
所属機関: 1癌研究会付属病院内科
ページ範囲:P.438 - P.439
文献購入ページに移動“Heinkel倒る.再起不能か”との知らせが届いたのは1981年3月も末のことだった.それから2カ月後,私は偶然にもAntwerpで教授と再会した.13th International Congress on Stomach Diseaseの会場,しかも幸いなことに教授と私は同じシンポジウムに招かれていた.一見して病み上がりとわかる姿の教授は私と顔を合わせるなり,“おまえはきっとここに来ると思っていたよ.会えて本当によかった”と何度も繰り返すのだった.このとき,いつもとは違う教授の雰囲気に接した私は,“この人と共に過ごせる時間はそう長くはあるまい.”との予感に何とも言いようのない淋しさを感じたことを,今思い出している.夫人とのちょっとした口論の最中,腹部に激痛を感じたのが病気の発端だったこと,それが腹部大動脈瘤とわかり,破裂の寸前に手術を受けたこと,など教授は静かに淡々と語るのだった.そして最後に,“手術を受けるときになって,自分は神に祈ることなどしなかったよ.必ず生きて還えるという強固な意志,それは宗教を越えたものだからだ.”とつぶやいた教授の言葉の中に,この人がそれまで背負ってきた哀しみを視たような気がした.
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