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文献詳細

雑誌文献

胃と腸18巻6号

1983年06月発行

文献概要

研究

早期胃癌Ⅱb病変の成り立ちに関する病理組織学的研究

著者: 池園洋12 荒木恒敏12 篠原直宏1 菊池正教1 牧野哲也12 細井董三2 西沢護2 中村恭一1

所属機関: 1筑波大学基礎医学系病理 2東京都がん検診センター

ページ範囲:P.663 - P.671

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 Ⅱb型早期胃癌(以下Ⅱbとする)は,周辺正常粘膜と高低の差がないために,X線・内視鏡診断学が進歩した今日でもその診断は極めて困難であり,われわれが日常Ⅱbに接する機会は多くはない.Ⅱbと診断される症例のうちで最も多いのは5mm以下の微小癌であり,その大部分は切除胃の組織学的検索によって発見されたものである.6mm以上のⅡbが少ない理由として,胃癌はその発生より極めて短期間の時点においては,大部分がⅡbの形態をとり,癌発育・進展の過程で正常粘膜に比べてびらん・潰瘍化しやすい傾向のある癌では陥凹や潰瘍が形成され,一方,びらんや潰瘍による癌の部分的脱落の傾向が弱い癌では隆起性発育を示す.そして,極めて少数の胃癌は正常粘膜と高低差のないままの状態で発育・進展し,Ⅱbとして認識される形態を呈すると考えられる.このように,診断が困難であるⅡbの形態はどのような環境において成立するかが問題となる.なぜならば,もしその環境が解明されるならば,胃癌の診断に際して,その環境を考慮することによってⅡb診断の向上をはかることができると考えられるからである.

 本研究は,Ⅱbの存在する胃の背景粘膜,特にⅡbの周辺部の非癌粘膜について病理組織学的に検討し,Ⅱb成立の宿主粘膜要因について考察を試みた.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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