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文献詳細

雑誌文献

胃と腸18巻7号

1983年07月発行

文献概要

胃と腸ノート

食道の白斑,いわゆる“glycogenic acanthosis”

著者: 小林世美1

所属機関: 1愛知県がんセンター第1内科

ページ範囲:P.692 - P.692

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 1967年,私がシカゴ大学で食道ファイバースコピーを始めたころ,同僚が食道の白色斑点を“leukoplakia”とか“hyperkeratosis”と呼んでいるのを聞いた.それは決してまれなものでなかったことを思い出す.1970年日本へ帰ってみると,食道の早期癌が関心の的になっていた.その早期病変とはどんなものか,あるいは前癌病変はどんなものかが私の関心事となった.

 leukoplakiaと言うと,子宮頸癌の前癌状態として有名である.食道の白斑もシカゴ大学でleukoplahiaと呼ばれていたし,古い文献では確かにこのような白斑をleulcoplakiaとかhyperkeratosisと呼び,前癌状態と考えられ,また口腔内のleukoplakiaに似ていると言われている.さて,この白斑は本当に前癌状態なのだろうか.その当時私は,この自斑を片っぱしから生検し,follow-upすることが食道の早期癌を見付ける1つの方法かもしれないと考えていた.しかしながら,生検の病理レポートでは,著変なしと報告されることが多く,異型性を示唆する所見は得られなかった.初めに考えたようにどうも前癌病変などではなさそうだと気付きはじめたが,その後もその内視鏡所見を,つい“leukoplakia”とレポートに記載する習慣を持ち続けたのである.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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