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文献詳細

雑誌文献

胃と腸18巻7号

1983年07月発行

文献概要

今月の主題 潰瘍性大腸炎―治療と経過を中心に 主題

潰瘍性大腸炎に対する外科的治療の最近の動向

著者: 白鳥常男1 中野博重1 稲次直樹1 藤井久男1 関谷直1 村上浩二1

所属機関: 1奈良県立医科大学第1外科

ページ範囲:P.703 - P.710

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潰瘍性大腸炎の外科治療の歴史

 潰瘍性大腸炎の外科治療の歴史は19世紀の後半に始まり,最近30年間で目覚ましい進歩を遂げた.1948年Miller1)らが穿孔を起こした潰瘍性大腸炎患者に対し,一期的に部分的結腸切除と回腸瘻造設術を行ったところ,良好な結果が得られたことから,以後結腸切除,回腸瘻造設術が盛んに行われるようになった.Scarborough(1955)2),Brooke(1954)3),Cooper(1956)4),Goligher(1961)5),Waugh(1964)6),Daly(1968)7)らがその後数多くの良好な成績を報告し,この術式が確立された.この術式は一期的に結腸を切除するため,中毒症や蛋白漏出を防ぎ,全身状態の改善をもたらすということで有用である.しかし,この術式に対してもいろいろな見解が示され,回腸瘻造設と亜全結腸切除を一期的に行い,二期的に直腸切除を行うのがよいとするものや,一期的に全大腸切除と回腸瘻造設がよいとするものもみられた.回腸瘻術式の確立により潰瘍性大腸炎の治療は長足の進歩を遂げたが,反面永久人工肛門の障害が出現してきた.回腸瘻よりの排便のコントロールの困難性,回腸瘻周囲の皮膚びらん,回腸瘻よりの腸脱出などがこれらの障害として取り上げられた.この問題を解決すべく試みられたのがKockのcontinent ileostomy8)である.現在この術式は欧米で多く用いられ良好な成績を収めている.

 一方,本症に対し,自然肛門温存術式も人工肛門造設術と並行して行われた.1901年,Lilienthal9)によって回腸S状結腸吻合術が報告されて以来,この術式が用いられるようになった.1953年,自然肛門温存術式の推奨者であるAylett10)は,回腸S状結腸吻合より回腸直腸吻合のほうが有利と考えた.Aylettの術式は全結腸切除,回腸直腸吻合術であり,これにprotective loop ileostomyを加えたものである.以後Aylett11)は1966年に300例,更に1974年12)に443例の回腸直腸吻合術の成績を報告し,90%の成功を得たとしている.この回腸直腸吻合術もAylettのようにほとんどの症例に行っている施設もあるが,Adson13)らのように10%の施設もある.Table1は諸家の回腸直腸吻合術の例数と頻度を示した.このように欧米の施設によって頻度が違うのは回腸直腸吻合術には,①残存直腸の再燃,再発,②縫合不全などの合併症,③残存直腸の癌化,という問題を抱えていることによるようである.そこで近年上記の問題,特に直腸粘膜温存による再燃・再発・痛化の問題に対する解決策として直腸粘膜を抜去して回腸肛門吻合を行う術式が注目されてきている.この方法は1948年Ravitch22)により報告されたが,結果はあまり良好でなかった.次いでSoave23)がHirschsprung病の治療に直腸粘膜抜去法を行って良好な成績を上げたことにより,この手技を本症の術式に利用しようとして行われてきた.最近Martin24)は結腸を全摘し,直腸粘膜を肛門側から歯状線口側1cmまで温存し,残りの直腸粘膜を剝離,歯状線より1cm口側にて回腸肛門吻合を行い良好な成績を報告している.以後Peck25),Fonkalsrud26),Telender27),宇都宮28)らにより種々改良がなされ,症例数も増加しつつある.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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