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文献詳細

雑誌文献

胃と腸18巻7号

1983年07月発行

文献概要

今月の主題 潰瘍性大腸炎―治療と経過を中心に 主題

潰瘍性大腸炎の経過に関するX線学的検討―結腸炎と直腸炎との対比

著者: 牛尾恭輔1 檜山繁美1 志真泰夫1 石川勉1 後藤裕夫1 村松幸男1 高安賢一1 森山紀之1 松江寛人1 笹川道三1 山田達哉1 市川平三郎1

所属機関: 1国立がんセンター放射線診断部

ページ範囲:P.723 - P.733

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 潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis,以下UCと略)は成書的には病変は直腸から始まり,漸次,口側へと進展し,肛門側ほど変化が強いとみなす見解が支配的である.しかし現在の進歩した検査法と診断能とで検討すると,必ずしもそうではない例を多く経験する.ところで,病変には病型と病期があり,腫瘍が非可逆的変化であるのに比し,炎症性疾患は程度の差はあれ,可逆的であることが多い.特にUCは再発・再燃を繰り返す率が高い疾患であるため,UCの経過をX線学的に論じる場合には,どの病型で,どの病期に撮られた写真であるかを常に考慮しておかねばならない.実際,UCを初発時の早期からその成り立ちを観察することは難しく,日常の診療でUCと診断されている例の多くは,検査時には既にかなりの日数を経ており,また何回も再発・再燃を繰り返した例の一時期,病態の一断面をみているにすぎない.だからUCの本態を追求するには,多くの症例を集めて,各断面を埋め合わせると共に,1つ1つの例については経過を経時的または遡及的に検討し,断面をつなぎ合わせることが重要である.これは時間的要素を重視した診断学の概念が加わっており,X線病態学の分野に属すると言えよう.幸いなことに本邦では,西沢,狩谷らにより理論化された注腸二重造影法1)の普遍化と共に,10年を越えるUCの経過観察例も次第にその数が増してきており,その中で狩谷2)は最近,病変の固定化という概念を唱えはじめている.本稿では1年以上の間隔で2回以上の注腸検査が施行された例(以下,経過例)にて,注腸X線像の推移を経時的,または遡及的に検討を加え,その変化が結腸と直腸とで差があるか否かを,対比して検討したので,その結果を報告し,UCの本態,自然史の一端を明らかにしたい.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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