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学会印象記
第69回日本消化器病学会総会
著者: 西田達郎1 藤田晃一2 八尾恒良2
所属機関: 1九州大学医学部第2内科 2福岡大学医学部第1内科
ページ範囲:P.772 - P.773
文献購入ページに移動“花下遊楽”の季節となり,大阪城の桜も満開となった4月11日より3日間,第69回日本消化器病学会総会は山本祐夫会長のもとに,豪華な大阪ロイヤルホテル,NCB会館の2会場で開催された.今回は肝部門の講演が過半数を占めたが,われわれは主として消化器部門を中心に講演を聴いた.
第1日目はワークショップ“消化器疾患と腸内細菌叢”(司会 下山孝・白鳥常男両教授)が開かれた.本企画は本邦における腸疾患への関心の増加に伴い,現在までの腸内細菌叢に関する知見を整理しようとする意図で開かれ,時期的にも高く評価されるものと思われたが腸内細菌のサンプリング,培養,同定などから,吸収不良症候群,大腸癌,ポリープ,細菌性下痢,薬剤性下痢などの病態と細菌叢の関連まで,あまりにも内容が多岐にわたり,演者数も多数となり,ややディスカッションの盛り上がりを欠き,残念な感じがした.嫌気性菌培養は,ほとんどの施設が,光岡教授らの方法を用いておりサンプリングでは,糞便をhomogeneousにすることの大切さを教えられたが,小腸細菌叢に関するデータにはまだ再現性に問題があり,小腸細菌叢と病態との関連が明らかになるには,なお時日を要すると考えられた.また,腸内細菌叢の民族差も,近々,より明らかにされるものと期待される.吸収不良症候群に関しては,bacterial overgrowthに伴う胆汁酸の脱抱合を扱った演題があったが,observationの1つとしては理解できるものの,主因と断定した点には疑問が残った.最近臨床的に話題となっているantibiotic-associated colitisに関しては,出血性腸炎にはKlebsiella oxytoca,偽膜性腸炎にはClostridium difficileの役割が注目を浴びているが,“induce”ではなく“associate”であり,起炎菌としての評価,病因的意義づけは,今後の臨床と基礎とが一体となった慎重な検討が必要となろう。なお,Cl.difficileの毒素の検出に簡便なLatex凝集反応が利用できるということは,日常診断上,われわれには有益なニュースであった,潰瘍性大腸炎については,Bacteroidesとの関わりを示唆した臨床的,実験的な報告もあり,更なる検索が待たれる.
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