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文献詳細

雑誌文献

胃と腸18巻7号

1983年07月発行

文献概要

研究

胃の異型上皮巣の三次元構造―異型腺管の構築と腺癌・化生胃粘膜との差異

著者: 高橋徹1 岩間憲行1

所属機関: 1東北大学抗酸菌病研究所病理学部門

ページ範囲:P.775 - P.782

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 胃のいわゆる異型上皮巣1)2)は腺腫(tubular adenoma)3)4),Ⅱa-subtype5),腺腫性ポリープ6)など種々のカテゴリーで扱われ,その病理総論的な本体,胃癌との関係などに未解決の問題を残している.そしてこれらの問題を扱ううえで,組織学的に腺癌とどう識別するかが1つの隘路である.例えば異型上皮巣からの癌発生といった症例に関して,それは最初から癌ではなかったかという議論がしばしばつきまとうが,これなども結局は同様の問題に帰着するであろう.

 腺癌とそれ以外の異型腺管の識別,この問題を扱った多くの先達が指摘したことは,細胞の異型だけでなく,腺管構築の異常に着目することの必要性であった.実際,腺癌が癌性腺管(carcinomatous gland)と称すべき構築異常を伴うことは広く認められるところで,「胃癌取扱い規約」7)ではこれを“構造異型(SAT)”と名付け,重要な診断の手掛かりとした.しかし具体的に癌性腺管とはどのようなものか,その形態学的原則は示されず,判断は見る者の直観に委ねられた.腺構築の問題は本来三次元に属しており,二次元的組織像では見通しが立ちにくいことが原因であろう.そこでわれわれは癌性腺管の骨格を明らかにすべく,胃腺癌の各型から復構解析を試みた8).今回はこれを基礎として異型上皮巣の三次元構造を解析したので,それが腺癌,特に高分化型とどのような点で異なり,あるいは共通するかを述べたいと思う.なお異型上皮の発生母地とされる腸上皮化生粘膜についても検討を行った.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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