研究
大腸上皮性腫瘍生検組織の異型度の客観化
著者:
渋谷進1
中村恭一1
池園洋1
東郷實元1
菊池正教1
所属機関:
1筑波大学基礎医学系病理
ページ範囲:P.1341 - P.1348
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要旨 生検組織にみられる大腸上皮性腫瘍の異型度を客観的に表現するため,構造異型と細胞異型の形態計測を行い,その客観的数値と病変の異型度とを比較検討した.対象は大腸良性腺腫190病変,良性悪性境界領域46病変,癌59病変である.それら病変の組織標本を画像診断処理装置を用い,乱れ係数(一定倍率の顕微鏡像における腺管面積と間質面積の比),重複ドーナツ係数(一定倍率の顕微鏡像におけるマイナスオイラー標数腺管出現率),核腺管係数(一定倍率の顕微鏡像における核腺管面積比)を測定し,前2項を構造異型の尺度,最後の項を細胞異型の尺度とした.その結果,乱れ係数は良性腺腫2.34±0.82,良性悪性境界領域病変3.84±1.04,癌4.34±1.24で,重複ドーナツ係数は良性腺腫7.2±7.2,良性悪性境界領域病変12.6±9.6,癌42.6±31.4で,核腺管係数は良性腺腫0.37±0.07,良性悪性境界領域病変0.46±0.06,癌0.57±0.06であり,3係数とも重なり合いを示しながらも差がみられ,t検定にて有意差が認められた.以上のごとく,病変の異型度の順(良性―境界―癌)に3係数の数値は並び,客観的指標として適切であるとみなされた.更に,3係数を用い,良性悪性境界領域病変の振り分け診断を試み,16病変が良性とされ,7病変が癌と診断されたが,残りの23病変は依然として,良性悪性境界領域病変として残った.