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雑誌目次

雑誌文献

胃と腸19巻2号

1984年02月発行

雑誌目次

今月の主題 Panendoscopyの評価(2) 序説

“Panendoscopyの評価”特集に当たって

著者: 岡部治弥

ページ範囲:P.127 - P.128

 1982年5月,横浜での第24回日本消化器内視鏡学会総会のパネルディスカッションで“上部消化管スクリーニング法として内視鏡検査はX線検査に代わりうるか”というテーマを取り上げ,多賀須,西沢両博士司会のもと各パネリストに活発な意見を開陳していただいた.

 顧ると,1950年の胃カメラの発明後は,たゆみなくその改良が進められ,やがて胃カメラ研究会(現在の日本消化器内視鏡学会の前身)の発足と共に,本診断法は日本全国に急速に普及していった.そしてわが国における胃疾患診断学,特に早期胃癌診断学の確立に多大の貢献をした.しかし本検査法はいわば盲目撮影に近いものであり,かつ当時の機構上,胃内の撮影が困難ないし不可能な部位も多く,したがってスクリーニング検査としての上部消化管X線検査は不可欠であり,その写真を参考として胃カメラ検査は施行された.しかし,ルチーンのX線検査で見逃されていた病変が胃カメラ写真に鮮明に捉えられたり,X線検査にて明瞭に出現している胃体部後壁の病変が,どうしても胃カメラに捉えられないなどのギャップがあり,当時はX線検査と胃カメラ検査は車の両輪にたとえられ,両者相補い合って,より正確かつ微細な診断ができると唱導されたものである.またその当時は白壁一門による二重造影法が確立され胃微細診断能も飛躍的進歩を示した時期でもあり,胃カメラはX線検査に続いて行われるべきものと位置付けされていた.もっとも既に当時,胃集検のスクリーニングに胃カメラを用い,高率に早期胃癌や病変の発見を報告していた研究グループがあったが,これは当然食道や,胃の一部,更に十二指腸における良悪性病変のスクリーニングには目をつぶったもので,普及はみられなかった.やがて米国にて1958年に発明されたHirschwitzのファイバースコープが1962年日本に輸入されたのを契機として早くも1964年には国産化が成功,胃カメラとファイバースコープを組み合わせた器種も出現し,胃内視鏡検査の一大快進撃がここに始まった.内視鏡学者とメーカーとの共同研究のもとに,まさにとどまる所をしらぬ改良と進歩が重ねられ,ついに1973年panendoscopeの出現により,咽喉部から食道,胃,十二指腸第2部まで,全く盲点なしに観察し,怪しい微細病変については色素散布法による明瞭識別化ないし直視下生検による組織学的検索が容易に行えるようになった.誇張した表現をすれば,上部消化管における病変は,あたかも皮膚表面の変化と同様に観察し,拡大撮影し,組織検索も可能となったわけで,消化器病に携わる医師の長年の夢が実現したわけである.20数年前の胃カメラ時代には誰も想像しなかったであろう.この間の胃内視鏡検査の進歩発展の道のりを共に歩いて来た筆者にとって,この変遷は誠に印象深いものであった.

主題

食道癌スクリーニングにおけるX線の役割

著者: 山田明義 ,   小林誠一郎 ,   磯部義憲 ,   吉田操 ,   杉山明徳 ,   遠藤光夫

ページ範囲:P.129 - P.139

要旨 当センターにおける食道癌切除例の経験から,食道癌スクリーニングにおけるX線の役割を検討した.1982年までの食道癌切除例1,015例のうち,他施設を含めてX線検査でチェックできなかったものは17例(1.5%)で,大部分が表在平坦型もしくは表在陥凹型であった.X線スクリーニングに当たって,①胃検査のついでに食道を撮っておくという安易な気持を捨てる,②透視観察をおろそかにしないこと,③二重造影像を必ず撮る,特にhigh risk groupで良好な像が得られないときは経鼻挿管を行うこと,④読影力を向上させること,⑤納得できない所見はかすかなものでも精検,内視鏡検査を行うこと,以上の点が遵守されれば,食道癌のスクリーニングとしてX線は十分にその役割を果たしうると考えられた.

食道癌スクリーニングにおけるpanendoscopyの位置づけ

著者: 幕内博康 ,   熊谷義也 ,   山崎栄龍 ,   三富利夫 ,   杉原隆 ,   三輪剛

ページ範囲:P.141 - P.153

要旨 食道癌のスクリーニングとしてのpanendoscopyは診断能が極めて高く有力な手段であるが,診断医の育成,被検者への侵襲,多数の症例を扱えない,などの欠点がある.したがって食道癌のスクリーニングを系統的に行うにはまずX線造影を,それも食道を胃と同時に集団検診体制に乗せて施行すべきである.これにより進行癌ならびに深達度smまでの表在癌を発見することができる.続いて,上部消化管内視鏡検査を施行する際には必ずpanendoscopeで食道も観察する必要があり,特に55歳以上の男性には必須である.少しでも異常を認めたらルゴール染色や生検を行うことにより診断を確定できる.このように,食道癌のスクリーニングにおいてpanendoscopyは二次的な位置にある.対象となるのは表在癌,特にsuperficial flat type,erosive type,plateaulike typeであり,深達度で分けるとep癌,mm癌である.また,食道微小癌も内視鏡診断が威力を発揮する分野であると考える.

胃癌スクリーニングにおけるpanendoscopyの位置づけ―X線診断の立場より

著者: 浜田勉 ,   加治文也 ,   浦野薫 ,   鎗田正 ,   小林茂雄 ,   丸山俊秀 ,   松川正明 ,   泉嗣彦 ,   八巻悟郎 ,   梁承茂

ページ範囲:P.155 - P.165

要旨 1980年1月~1982年12月に,ルチーンX線検査を行った8,567例のうち1,560名(18.2%)に内視鏡検査を行った.見逃し例も含めて133例の癌が発見された(発見率1.55%).X線診断の確かさは,癌と診断した98例中88.8%,癌疑いとした107例中10.3%が癌であった.不確かさについては,潰瘍とした4.8%に,潰瘍瘢痕とした3.8%に,良性隆起性病変とした1.4%に,軽微な所見とした0.8%に癌を認めた.X線診断の実態は,進行癌の82.9%を正診できたが,早期癌では28.2%を正診したにすぎず,12.8%を癌疑いと診断している.更に,早期癌の25.6%を良性病変と診断し,7.7%を軽微な所見のみとした.進行癌の見逃しはないが,早期癌が11例見逃されている(見逃し率0.13%).原因は,併存病変に目を奪われたものが6例,前庭部の20mm以下の2例,胃体部の7mm大のⅡb,微小癌であった.X線検査,次いで内視鏡検査を行う立場からスクリーニングにおける癌発見の実態を示した.

胃癌スクリーニングにおけるpanendoscopyの有用性―特にX線検査と対比して

著者: 小沢昭司

ページ範囲:P.167 - P.173

要旨 外来患者の上部消化管疾患のスクリーニングにX線を用いた4,568名の成績と,panendoscopyを用いた5,043名の成績を比較検討した.上部消化管スクリーニングにおいてX線検査およびpanendoscopyの胃癌発見率はそれぞれ1.51,1.49%と同様であったが,発見胃癌に占める早期癌の比率は前者で14.5%,後者では45.3%と3倍も高かった.これは早期胃癌の発見にはpanendoscopyがX線検査より優れていることを示す.次に,X線検査で発見した早期胃癌の最大径の平均値は41.3mm,panendoscopyのそれは26.9mm,20mm以下の小病巣の頻度は前者では14.3%,後者で50.0%,更に10mm以下の小癌および微小癌はそれぞれ10.7,26.5%であった.早期胃癌でもより早期の,より微小のものを発見すべきことを強調した.病巣が無茎性の隆起型でも,陥凹型でも十分に小さければ,内視鏡的ポリペクトミーにより治癒せしめうるからである.

胃癌診断過程におけるpanendoscopyの位置づけ

著者: 藤井彰 ,   丸山雅一 ,   原島三郎 ,   竹腰隆男 ,   馬場保昌 ,   佐々木喬敏 ,   大橋計彦 ,   村上義史 ,   清水宏 ,   渕上在弥 ,   大城宏之 ,   高木国夫 ,   高橋孝 ,   大橋一郎 ,   太田博俊

ページ範囲:P.175 - P.183

要旨 癌研付属病院における最近の内視鏡診断の実態と,使用器種別の能力とを明らかにするために1981,1982年の12,029件の上部消化管内視鏡検査の成績を,一部コンピューターを利用して解析した.被検者への侵襲,1回で食道から十二指腸まで検査しうる点でpanendoscopeは先行するX線検査などの情報が十分でない場合は第一選択とすべきだが,記録性に劣ること,病変の多い胃体部胃角の後壁が観察しづらいなど,万能とは言い切れないものがあり,内視鏡検査に当たっては各器種の特徴をよく知ったうえで最も対象に適した器種を選択すべきであると考えられた.

X線とpanendoscopyの比較―上部消化管癌のスクリーニングにおける位置づけ

著者: 西沢護 ,   野本一夫 ,   細井董三 ,   岡田利邦 ,   山田耕三 ,   牧野哲也 ,   志賀俊明 ,   江藤和美 ,   古沢英紀 ,   徳重順治 ,   原本富雄

ページ範囲:P.185 - P.193

要旨 細径panendoscope導入前と導入後に分けて,X線診断と内視鏡診断の拾い上げ診断能,偶発症,内視鏡拒否率を比較し,以下のような理由から,臨床の場においては理論的には細径panendoscopeは上部消化管癌のスクリーニングとしてX線に代わりうるという結論を得た.(1)細径panendoscope導入前の側視鏡では食道,胃ともに拾い上げ診断能,偶発症,内視鏡拒否率のいずれの点でもX線が勝り,スクリーニングはX線でなければならなかった.(2)細径panendoscope導入後は,食道,胃ともに拾い上げ診断能はpanendoscopyがX線に勝り,偶発症は問題にするほどではなくなった.しかし,内視鏡拒否率は調査によってかなりのバラツキがあり,救命しうる癌を少しでも多く発見するという立場からは,X線検査を完全になくすことはできない.(3)丁寧なpanendoscopyが行われれば,胃癌なしとされたものについてはX線よりも受診間隔を延ばすことができる.

Panendoscopyの評価―私はこう考える

著者: 芦澤眞六 ,   市川平三郎 ,   竹本忠良 ,   熊倉賢二 ,   五十嵐勤 ,   高木国夫 ,   川井啓市 ,   大柴三郎 ,   八尾恒良

ページ範囲:P.195 - P.200

長所・短所をよくわきまえよ

 東京医科大学内科

 芦澤 眞六

 最近の内視鏡は細く柔軟となり被検者の苦痛が少なくなったとはいえ,いまだ全く楽な検査とは言えぬ.それゆえ,1度の挿入で上部消化管をすべて検査しうるpanendoscopyは経済的な面からも,その実用化は強く望まれるものである.

 胃のX線検査に際しては同時に食道,十二指腸をもよく診るのは常識であるが,従来の胃内視鏡では胃についてはまず申し分ないが,食道や十二指腸も正確に診ることは不可能だったと言ってよい,同じ管腔臓器でありながら,それぞれ解剖学的な形態に相応するように,食道,十二指腸専用のものが,多くの試行錯誤を繰り返しながら開発されてきた所以でもある.panendoscopeの出現はX線での常識を内視鏡でも行えるようにしてくれるものと言える.

研究

有病率と年間罹患率(発生率)からみた胃癌の自然史―特に受診間隔決定のために

著者: 西沢護 ,   下鑪研悟 ,   野本一夫 ,   細井董三 ,   岡田利邦 ,   牧野哲也 ,   山田耕三 ,   志賀俊明 ,   江藤和美 ,   古沢英紀

ページ範囲:P.201 - P.207

要旨 現在の検査法で発見しうる有病率と年間罹患率(発生率)より,発見可能な早期癌のstageから愁訴のため医療機関を訪れる直前までの罹病期間は早期癌では少なくとも3.5年,進行癌では少なくとも1.3年と推定され,丁寧な細径panendoscope検査で胃癌なしと診断されたものには3年の保証期間を与えることができる.ただし,5~10%存在するスキルスとその類似疾患は除く.また,50~69歳の健康人6,498人に直接X線検査と細径panendoscopeを併用した成績を胃集団検診の全国集計と比較すると,早期癌の発見率について,男性の場合で全国集計1に対し,細径panendoscopeでは13発見することになる.胃集団検診方法の改善が急がれねばならない.

症例

腸結核に合併した横行結腸癌の1例

著者: 中野浩 ,   安座間聡 ,   宮地育郎 ,   北川康雄 ,   佐々木国夫 ,   後藤正己 ,   山内雅博 ,   堀口祐爾 ,   中島澄夫 ,   伊藤圓 ,   川瀬恭平 ,   宮川秀一 ,   岩瀬克己 ,   近藤成彦 ,   三浦馥

ページ範囲:P.209 - P.215

 われわれは腸結核と大腸癌の合併したまれな症例を経験したので報告する.この症例の大腸癌の肉眼所見は通常みられる大腸癌の形と少し異なっていたので,この点に注目し腸結核や潰瘍性大腸炎に合併する大腸癌の形態的特徴について若干の文献的考察を試みた.

回盲部変形を来した大腸結核・大腸癌併存の1例

著者: 中泉治雄 ,   小西二三男 ,   山崎信

ページ範囲:P.217 - P.225

 大腸癌の増加が言われているが,結核性大腸炎と大腸癌の合併症例の報告は少ない.われわれは,30年前に結核性腹膜炎を経験した63歳女性に狭窄型上行結腸癌と,隣接した上行結腸に多発瘢痕を認め,壁在リンパ節には結核性肉芽腫と結核菌を証明した1例を経験した.回盲部変形を来しており,診断にも一時迷いを生じたので報告する.

Case of the Month

Early Gastric Cancer, Type Ⅱa

著者: ,   ,  

ページ範囲:P.123 - P.126

 A 73 year-old man was referred to the Second Department of Internal Medicine, Osaka Medical College on April 19, 1983 from another hospital where abnormalities of the stomach was checked. He had no subjective complaint at the first visit to our clinic. Physical examination and laboratory data revealed no abnormalities.

 Upper gastrointestinal x-ray examination demonstrated slightly elevated lesion consisting of the aggregation of various shaped, small nodules from the lesser curvature to the posterior wall of the gastric antrum. Similar findings were also demonstrated by endoscopic examination with GF-B3. Biopsy specimen taken from the lesion showed well differentiated tubular adenocarcinoma.

研究会だより

「大阪胃研究会」15年の歩みと現況

著者: 高見元敞 ,   中島敏夫

ページ範囲:P.166 - P.166

 大阪の表玄関,梅田の一角にある新阪急ビル12階のスカイルームで,毎月1回,私たちの例会が開かれています.「大阪胃研究会」が正式に発足したのが1968年ですから,すでに15年の歳月が流れ,1983年夏には例会も150回を越えました.

 この研究会は,もともと1963年ごろに始まった阪大病院内の消化器の検討会に端を発しています.その後,1967年2月に,府立成人病センターや国立大阪病院など,阪大の関連病院が加わって「阪大胃研究会」が生まれ,それが現在の研究会の基盤になりました.

学会印象記

第26回日本消化器内視鏡学会総会

著者: 山田直行

ページ範囲:P.225 - P.225

 第26回日本消化器内視鏡学会総会は,1983年ll月16日から3日間,大柴三郎会長のもと大阪市で開催された.本学会はInternational Symposiumでの内容に象徴されるごとく,endoscopic surgeryに関する報告が目立った.食道静脈瘤の硬化療法,高周波,レーザーなどによる癌の治療,止血,ERBDなど,数年前はトピックスであったものが今や普遍化され,各方法論の客観的評価が求められる時期を迎えつつあるようだ.

 早期胃癌(非手術的治療とその後の経過について)のシンポジウムでは,2cm以下の隆起型m癌が,レーザー,高周波,各種局所注射などすべてに根治性のあることが示された.しかしsm以下では,局所根治性およびリンパ節転移の点で問題があり,特に陥凹型への適応については慎重を要すとの意見が大部分を占めている.やはり現状では,手術不能例,高齢者を中心に適応を選択すべきであろう.また,内視鏡的治療に先立ち,病変の拡がり,深達度に対する診断学の重要性が指摘された.

第26回日本消化器内視鏡学会総会―膵・胆を中心に

著者: 小野美貴子

ページ範囲:P.226 - P.226

 1983年11月16日から3日間にわたって大阪で開催された第26回日本消化器内視鏡学会総会は,大柴会長以下教室員の皆様の御努力の甲斐あって,約2,000名の会員が集い,成功裡に終了した.プログラムには数々の興味深いテーマが目白押しで,取捨選択に困難を感ずるほどであったが,ここでは主に膵・胆に関した部門の印象を述べてみたい.

 まず初日のワークショップ“内視鏡的biliary drainage”は,同法が閉塞性黄疸に対する内視鏡的治療法として脚光を浴びている今,誠にタイムリーな話題として多くの聴衆を動員した.胆道スコープを用いる経皮的アプローチと十二指腸スコープを用いる経乳頭的アプローチの双方の手技が映画で示され,各自の使用するチューブ類の入手先や価格が呈示されるなど,本法の普遍化に重きを置いた展開であった.黄疸の治療に対する本法の位置づけは,その一般論が示されたが,外科的減黄術との兼ね合いは今後の問題として残された.

Refresher Course・2

この症例にみる診断過程のポイント

著者: 岡部治弥 ,   西元寺克礼

ページ範囲:P.227 - P.230

□患者:45歳男性.

□主訴:心窩部痛.

〔初回X線所見〕(背臥位二重造影Fig. 1)胃角部小彎に大きい側面ニッシェが認められ,前壁側に潰瘍周堤と思われる陰影を伴う.ニッシェの底部はスムーズであり,周辺浮腫像より良性潰瘍の急性増悪期と考えてよい.更にこのニッシェよりやや離れた後壁に皺襞集中を認める.これらのひだは一点には集中せず明瞭に途絶する.中心に円形透亮像を認め,この周辺に淡いバリウム斑があり,Ⅱc型早期癌が強く疑われるが,潰瘍(小彎側)との関係は不明である.

消化器診断入門

上部消化管―食道

著者: 大柴三郎 ,   岡崎幸紀 ,   岡田利邦 ,   多賀須幸男 ,   高見元敞 ,   西俣寛人

ページ範囲:P.231 - P.234

 装置・機器

 質問 最近のリモートコントロールのX線撮影装置は,シャッターを押してから撮れるまでに随分時間がかかります.それで食道ではタイミングがとりにくいんですが,どうしたらよいのでしょうか.

 西俣 ボタンを押しておいて放せばパチッと切れる装置がありますね.それを押しておいて,“いまだ!”というときに放してやると,パッとその瞬間にシャッターが切れるのがあります.

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欧文目次

ページ範囲:P.121 - P.121

書評「画像診断のための知っておきたいサイン」

著者: 片山仁

ページ範囲:P.140 - P.140

 本書はわが国で初めての企画と考えられる“計測値”の姉妹篇として出版されたものである.非常に簡潔に図解入りで画像診断に際して常識的となっている所見(サイン)をまとめたものである.非常にハンディな本でサインに関する知識を整理するのに都合が良い.図解は思いきって簡略化されており,結果としてサインの特徴をよく表現している.原著が出て時間がたつと,各人のサインに対する理解は,原著と少しずつ変わって,修飾されていくのが常である.時に原著が意味する内容と異なったものにすりかえられる危険がなくもない.フィルム読影カンファレンスなどで所見を説明する場合―サイン陽性といえば一口で済み,情報の交換に非常に便利であるが,もし人によって同一サインに対して異なった意味付けをしているとすれば,もはや共通語(情報伝達の媒体)とはなりえない危険がある.したがって―サイン陽性という表現はその内容を正しく理解して使うべきであるというのが小生の持論である.サインにはいろいろなサインがあり,数えあげれば大変な数になるであろう.サインの中にはその言葉からイメージが湧いてくるものもあるが,一方,イメージとは全く無関係につけられた呼び名のサインもある.人名を冠したものであったりすると,その分野の専門家以外には何の意味もない言葉になってしまう.

 このように―サインには便利さと共に不便さがある.本書を通じて皆がサインを正しく理解し,正しい共通語として使用できるようになると思う.

書評「腸疾患の新しい診かたと治療」

著者: 竹本忠良

ページ範囲:P.194 - P.194

 依頼されて,執筆を受諾した原稿は,それこそあっという間に机の上に溜まってくる.書くことを承諾した以上,契約を完了したわけである.

 そこで,1日も早く,少なくとも予定日までには書きあげなければならないと思って,このごろみんな

が使っている薬屋さん提供のcolor clear holderのいくつかに,たくさん原稿用紙を入れて,日本列島を飛び廻ることになる.ところが,締め切り日のきつい雑誌の原稿の執筆のほうが,どうしても先になる.そのうえ,当り前のことであるが,こと書評となると,まず提供された本をすみずみまで読み通さなければならない.眼光紙背に徹しなければ,書評者はつとまらない.それには,まとまった時間を多忙なスケジュールのなかから割り当てなければならない.

海外文献紹介「微小胆石症」

著者: 種広健治

ページ範囲:P.208 - P.208

 Microlithiasis of the gallbladder: D Houssin, D Castaing, et al (Surgery, Gynecology & Obstetrics 157: 20-24, 1983)

 微小胆石症とは一般に径3mm以下の結石が胆囊内に存在することと定義される.小さいために発見が難しくX線,超音波で結石を確認できない場合は診断上問題となり,また,結石が移動して急性膵炎を惹起する懸念があり治療上も重要な問題となる.著者らは微小胆石症の頻度,臨床経過を径3mm以上の胆石症と比較して対策を検討した.対象は手術または剖検で結石の個数と性状を確認できた731例であった.サイズの揃ったのは503例で,微小胆石症68例,径3mm以上の胆石症435例(3~10mm131例,10~20mm151例,20mm以上153例)であった.サイズの不揃いなのは228例で,1つでも径3mm以下の胆石が混在する場合を微小胆石症とすると,その数は102例で,全体に占める微小胆石症の頻度は約23%(171/731例)であった.

海外文献紹介「長期非経ロ的栄養摂取患者での胆囊疾患」

著者: 小林世美

ページ範囲:P.215 - P.215

 Gallbladder Disease in Patients on Long-Term Parenteral Nutrition: JJ Roslyn, HA Pitt, LL Mann,ME Ament, L DenBesten (Gastroenterology 84: 148-154, 1983)

 空腹時には肝外胆管に対する神経性,あるいはホルモン性の刺激の欠如が起こる.したがって,長い間の空腹は,胆囊内胆汁のうっ滞を起こす.胆囊から胆汁の流出が遅延する結果,胆囊炎や胆石発生が起こりやすくなる.また,8~15時間の空腹状態は,胆囊胆汁のコレステロール飽和指数を増加させることがわかった.さて,長期間非経口的栄養摂取(TPN)の患者は,長期間経腸栄養摂取を制限されるので,胆囊胆汁うっ滞と結石のリスクが増大することが予想される.TPNの患者で,胆囊が著しく拡大し,胆囊炎と胆石の頻度が増すとの報告は,この仮説を支持している.

編集後記

著者: 岡部治弥

ページ範囲:P.236 - P.236

 たまたま本号では,序説と編集後記とを共に筆者が記すことになった.序説では本号特集テーマの趣旨について説明した.そのテーマは,“上部消化管疾患のスクリーニング手段として,パンエンドスコピーはX線に代わりうるか”ということである.序説の中で筆者は“両検査法の限界についての本質的比較論はもちろん必要であるが(スクリーニング法として)両検査法に付随する二次的問題点についての考察が重要である,(したがって)簡単に結論が出せるであろうかと”記したが,今,全論文を読み終わって,この両面,すなわち両検査法それぞれの診断限界,および二次的問題点すなわちスクリーニング法としての利点欠点があますところなしに論じられていると思う.ただ精密検査法としての診断限界に重点を置いたもの,スクリーニング法としての意義に重点を置き,その長短を比較したものと,そのニュアンスにはそれぞれ多少の差異がみられる.しかし,それでかえって比較の素材はあますところなく提供されているとも言える.いずれにしても序説に紹介した米国での経済的比較論とは全くレベルの違うオーソドックスな議論がなされている.また,最後の幾人かのexpertsによる諸意見は,それぞれ立場に応じた考え方の特徴がよく出ており,傾聴すべき点が多い.読者諸子は熟読玩味して,1人1人がそれぞれの経験を基盤にして本誌の内容を参考として自分自身の答を出してほしいものである.

基本情報

胃と腸

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1219

印刷版ISSN 0536-2180

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