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文献詳細

雑誌文献

胃と腸19巻5号

1984年05月発行

文献概要

今月の主題 受容体拮抗薬の位置づけ 主題

胃粘膜防御機構におけるプロスタグランディンの役割

著者: 小林絢三1 荒川哲男1 中村肇1

所属機関: 1大阪市立大学医学部第3内科

ページ範囲:P.527 - P.533

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要旨 Prostaglandin(PG)はヒトのすべての有核細胞のアラキドン酸から主として形成される.われわれはラット胃粘膜に存在するPG量とその遊離を測定する方法を確立した.その結果,ラットおよびヒトの胃壁において大量のPGE2あるいはPGI2が存在することが認められた.indomethacinあるいは水浸拘束ストレスを負荷することにより粘膜PGE2の著明な減少が認められた.一方,0.25NHCIの胃内投与により粘膜PGE2は2倍に増加し,壊死惹起物質(0.6NHCI)の投与により惹起される潰瘍の発生を抑制した.tetragastrinはまたPGE2,I2を増加させ,同様にその潰瘍の発生を防止した.これらの結果は,酸はcytoprotective PGを増加させ,粘膜を保護する.また,内因性PGは酸に対してnegative feed-backを示すことを示唆する.PGE2によって胃粘膜血流は増加し,PGF2αにより減少する.また,indomethacinは容量依存的に血流を低下させる.以上の結果から内因性PGは胃粘膜においてlocal regulatory actionを発揮すると考えられる.胃潰瘍症例において,潰瘍より離れた部位のPGE2量は健常人のそれと差がないが,しかし,易治性潰瘍の辺縁粘膜のそれは難治性のそれに比して高い値を示した.急性潰瘍,例えば,ポリペクトミー(電気焼灼)後の潰瘍は数日後に治癒した.これらの結果は慢性胃潰瘍の治癒の遷延化に粘膜PGの絶対的ならびに相対的不足が密接に関係していることを示している.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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