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文献詳細

雑誌文献

胃と腸19巻6号

1984年06月発行

学会印象記

第70回日本消化器病学会総会―上・下部消化管領域

著者: 樋渡信夫1 本郷道夫1

所属機関: 1東北大学第3内科

ページ範囲:P.699 - P.700

文献概要

 第70回日本消化器病学会総会は,3月26日から3日間,日本医科大学第3内科常岡健二教授を会長に,国立教育会館虎の門ホールを中心に開催された.今年は大雪に泣いた東京の街も,第1日目には暖かい陽が照り,やっと春の訪れを感じさせてくれた.

 第1日目午後にパネルディスカッション“Crohn病の病態,診断,治療”が行われた.診断に関しては,ごく少数の特殊な症例を除けば,どの施設でも臨床診断に迷うことはほとんどなくなっており,数年前と比較してわれわれの“目”がCrohn病に慣れてきていることが推察された.治療については薬物療法(サラゾピリン,プレドニンなど)に比し,栄養療法(ED,TPN)のほうが,臨床症状,X線・内視鏡所見の改善や予後の面で良好な成績を上げていることが報告された(西俣,樋渡,渕上).しかしながら,緩解導入後に高頻度に再燃がみられることも示され,松枝らは再燃予防を目的にhome hyperalimentation(H-HA)を行い,良好な成績を得ている.早期や急性増悪期の内科的治療としては栄養療法が中心になることでは意見の一致をみたが,栄養療法の適切な期間,投与方法(24時間持続投与の可否など),適切な脂肪含量などの問題点は残っており,更に薬物療法の位置づけ,緩解期におけるH-HAの評価や薬物療法の必要性の有無(外国文献では緩解維持効果なしと言われているが)については今後の検討が必要であろう.外科手術に際しての切除範囲については,“広範囲切除”を主張する発表はなく,必要最小限にとどめるべきとする意見が大勢を占めた.病態に関しては脂肪吸収障害,胆汁酸,腸内細菌について発表があったが,十分な討論は行われなかった.近い将来,胃・十二指腸病変も含めたCrohn病の長期予後と共に,病態に関しても十分な討議の場が持たれることを期待したい.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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