今月の主題 早期胃癌の再発死亡例をめぐって
主題症例 特異な経過をたどった早期胃癌の再発死亡例 B.陥凹型
Ⅱc型早期胃癌から肝転移し2年6ヵ月後に死亡した1例
著者:
望月福治1
伊東正一郎1
池田卓1
豊原時秋1
藤田直孝1
李茂基1
林哲明2
仙道康郎3
大槻昌夫4
沢井高志5
所属機関:
1仙台市医療センター内科
2仙台市医療センター外科
3仙道医院
4東北大学医学部第3内科
5東北大学医学部第2病理
ページ範囲:P.803 - P.806
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要旨 患者は49歳の男性.1975年10月ごろ左上腹部痛が続き胃X線ならびにGTFで胃前庭部小彎前壁寄りのⅡa+Ⅱcと診断され,1976年4月に胃切除術を施行された.切除胃でみると,同部の5×6mm,周囲の軽い盛り上がりのあるⅡc型早期胃癌であり,組織学的に粘膜下層に達する未分化型癌であり,リンパ節転移はみられなかった.術後2年3カ月目に黄疸が出現し,腹水,肝腫を触知した.CT,US,腹腔鏡で肝の多発性腫瘍像を認め2年6カ月目に死亡した.病理解剖学的診断は肝の多発性転移性癌,膵を巻き込む周囲リンパ節の大きな腫瘤が,三管合流部直下を圧迫し,総胆管閉塞がみられた.肺にも小さな転移巣が認められたが,胃吻合部粘膜には癌の再発はみられなかった.