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文献詳細

雑誌文献

胃と腸19巻7号

1984年07月発行

文献概要

今月の主題 早期胃癌の再発死亡例をめぐって 主題症例 特異な経過をたどった早期胃癌の再発死亡例 C.多発性

肺転移を伴った多発早期胃癌で胃切除に続き残胃全剔し1年後に肺切除した1例

著者: 磨伊正義1 北川一雄1 上野雅資1 沢武紀雄2 中西功夫3 渡辺洋宇4

所属機関: 1金沢大学がん研究所外科部 2金沢大学がん研究所内科部 3金沢大学医学部第1病理 4金沢大学医学部第1外科

ページ範囲:P.825 - P.830

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要旨 患者は68歳男性.約1カ月前より心窩部不快感と時々胸やけを認め来院した.4年前に胃腺腫を指摘され経過をみていた.上部消化管精査により,前庭部に不整な分葉状の隆起を認め,胃生検ではmild dysplasiaの所見であった.しかし4年前の所見と比べると,増大傾向があり,1980年5月28日胃部分切除が施行された.胃切除標本では前庭部に大きさ6.5×3.3cm,高さ1.0cmの隆起をみ,組織学的には巨大腺腫内に,多発性の癌巣を認めた.また偶然的な所見として,手術時肉眼的に認識しえなかった体中部切除断端近くに大きさ1.1cmの平坦型早期癌(Ⅱb型)が発見された.断端癌陰性でリンパ節転移もみられなかった.術後経過は良好で,無症状であったが,術後2年目に内視鏡にて残胃に新たにpolypoid cancerが発見された.1982年11月6日残胃全別術が施行された.その肉眼像は残胃前壁中心の表層性の隆起性癌(Ⅰ+Ⅱa)で,一部穹窿部および噴門直下小彎にまで及んでいた.組織学的には乳頭状腺癌の像を呈し,粘膜下層にも大量の浸潤を伴っていた.2回目手術の術後経過良好であったが,1983年夏ごろより,持続性の咳漱と38℃前後の発熱をみ,当時気管支肺炎として抗生物質の投与により治療された.胸部X線所見では肺門部の結節性肺紋理の増強と右上肺に中等度のテント状の肋膜陰影をみ,喀痰検査にて悪性細胞を認めた.1983年11月2日,右肺葉切除とS6,S10の肺部分切除および肺門リンパ節郭清を施行,その切除標本では右肺に多発する孤立性の転移性結節をみ,組織学的に胃癌の肺転移と診断された.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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