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文献詳細

雑誌文献

胃と腸2巻1号

1967年01月発行

文献概要

今月の主題 十二指腸潰瘍〔1〕 綜説

十二指腸潰瘍の病理

著者: 村上忠重1 安井昭1 今仁剛正1 中山旭1 門倉萩郎1 西田佳昭1 宮内博1 世良田進三郎1 大川真澄1 服部博之1 片岡徹1

所属機関: 1昭和大学第一外科学教室

ページ範囲:P.7 - P.15

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1.はじめに

 教室で経験した十二指腸潰瘍の病理所見については,岩堀が昭和36年に,また村上他が昭和40年に,それぞれ従来よりその時期までの統計的観察を行なって報告している.前者の研究対象は,昭和28年4月から昭和35年3月までの7年間の症例であり,後者のそれは,昭和27年6月より昭和37年12月までの,10年6月間の観察である.もちろん後者の方が例数が多く,その対象とした十二指腸潰瘍は,単独例98例,胃潰瘍との併存が61例である.

 両統計の示す十二指腸潰瘍の病理学的の傾向にはほとんど差異がない.したがって昭和41年末の現在においても,私どもは特にそれにつけ加えるべき新しい成績をもたない.

 この間にあって,絶えず私どもの脳裏を去らなかった問題が一つある.第1表に示したように,われわれは単独十二指腸潰瘍と平行して,それよりやや少ない数ではあるが,胃潰瘍との併存例を経験することである.単独の十二指腸潰瘍と,胃潰瘍と併存する十二指腸潰瘍との間に,何らか病理学的,あるいは臨床的な差異がないかという点がつねに私どもの気懸りてあった.しかし第1表でも分るように,3種の消化性潰瘍のうちで,この併存例は数がもっとも少なく,統計観察を行なうのに不十分であったので,最近までこの観察を試みる勇気がなかった.昭和41年3月にいたってこの胃・十二指腸潰瘍併存例がようやくにして102例に達したので,私どもは始めて併存例についての統計観察を行なった.

 しかしこの統計観察の結果(昭和41年第66回日本外科学会総会演題)は,単独の十二指腸潰瘍と,併存の十二指腸潰瘍との間に,ほとんど差異を見い出せないということであった.すなわち,これまで特に単独の十二指腸潰瘍のみを集計して,併存例を別にあつかっていたが,その必要が余りないことが証明されたわけである.

 そこで今回は,第1の観察期の昭和35年3月までをのぞいて,同年4月以降昭和40年3月までの5年間の切除標本を対象とし,その期間中の単独十二指腸潰瘍(57例)と併存十二指腸潰瘍(49例)とを併せた106例について,同種の観察を試み2~3の考案をつけ加えてみたいと思う.

 なお,私どもの教室では,潰瘍根治の立場から十二指腸潰瘍においても,原則として潰瘍を含めた切除術を適用し,Finstererの曠置術は特別の理由のない限り行なっていない.したがって手術されたほとんど全例が今回の観察の対象となっているわけである.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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