icon fsr

文献詳細

雑誌文献

胃と腸2巻11号

1967年11月発行

文献概要

今月の主題 慢性胃炎2 綜説

心身医学の立場から慢性胃炎をどう考えるか

著者: 並木正義1

所属機関: 1北海道大学医学部第三内科

ページ範囲:P.1407 - P.1412

文献購入ページに移動
はじめに

 これまで学会シンポジウムとして,何度か慢性胃炎の問題がとりあげられながら,一体どんな結論がえられたであろうか?また将来,はたして納得のいく解決がなされるものであろうか?

 慢性胃炎に関しては,たしかに近年いろいろな立場からの研究がなされている.しかしそれらは,ほんとうに慢性胃炎の本態を究明するという意味あいに沿うているものなのかどうか,私は知らない.それはともかく,慢性胃炎の診断は,胃の内視鏡検査や生検が普及するにつれて,昔よりはかなりの根拠をもってつけられるようになったが,それもひとたび自覚症状を含めた臨床像との関連においてみつめるとき,その診断は,はなはだあいまいなものとなる.結局いまなお各人各様にばくぜんとした考えをもって,いわゆる慢性胃炎の診断をなし,その患者を扱っているのが実状である.この状態はここ当分(あるいは永久に)続くかもしれない.慢性胃炎については,今後とも大いに各分野の人々の協力による研究がなされなければならないが,ものの本態というものは,そうたやすく解明されるものでもないし,そうだとすれば,日常診療にたずさわるものにとって,さしあたり必要にせまられることは,現に愁訴をもつ慢性胃炎なる患者を,どのように取扱い,処理していくかということであろう.実際問題として,たとえばその病型分類がいかに詳細になされようとも,患者の訴えや苦痛がなんらのぞかれないとしたら,およそ意味をなさない.臨床家にとって大事なことは,その本態の究明もさることながら,やはり患者の自覚症状をのぞいてやるということではなかろうか.そういう観点から私は,現在一般に慢性胃炎といわれている患者の,取扱い上の問題を中心にのべてみたい.かかげた題名は,いささか大げさな感をあたえるが,けっしてむずかしい議論を展開しようとの魂胆はなく,ただここでは,私の経験からして慢性胃炎といわれる患者を取扱う場合,心身医学的立場からの考慮がきわめて必要であること,また実際に日常の診療にあたって,この考えをどのように役立て,いかに患者を取扱っているかを具体的にのべるにとどめたいと思う.

 以下いくつかの項目にわけ,見解をのべてみたい.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?