文献詳細
今月の主題 小腸
症例
原発性非特異性多発性慢性小腸潰瘍
著者: 笹川力1 木村明1 大沢源吾1 田代成元1 木下康民1 小林繁1 山元寅男2 大田道雄3 高橋栄明3
所属機関: 1新潟大学医学部 木下内科 2新潟大学医学部 第三解剖教室 3新潟大学医学部 整形外科教室
ページ範囲:P.1547 - P.1551
文献概要
最近,私どもは11年間にわたり,腹痛,消化管出血,貧血,低蛋白血,浮腫,下痢,慢性イレウス症状を訴豪,虫垂,内痔核および胃切除,試験開腹を受けたが,診断が確定せず,輸血などの対症療法をくり返していた患者を経験した.各種消化吸収試験を行ない,開腹手術の結果,病因不明で,限局性腸炎とは異なる原発性非特異性多発性慢性小腸潰瘍と診断したので報告する.
原発性非特異性小腸潰瘍は1805年Mattew Baille1)により初めて記載されたが,まれな疾患で1963年までに170例報告されている2).その後,欧米では高血圧,心不全患者のKCI腸溶錠内服に伴なう小腸潰瘍の増加がiatrogenic ulcerとして注目され,実験的にも検討されている3)~7).たとえば1965年Lawrason6)の集計によると,本症は484例経験されており,この中,275例(57%)にKCI腸溶錠,または利尿剤の使用が認められている.本邦では1966年に岡部8,9)が薬剤と関係のない多発性慢性小腸潰瘍を2年間に5例経験したという紹介があるのみで,詳細な記載は見当らない.私どもの症例は岡部のものと良く似ており,また興味あることに,本例(姉)の妹も4年来,同様の症状と検査所見を示し,目下観察中であるが,今回は姉の成績を中心に述べる.
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