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文献詳細

雑誌文献

胃と腸2巻5号

1967年05月発行

症例

直視下胃生検による胃癌,ことに早期胃癌の診断における酵素化学の応用およびその細胞診への応用の可能性について

著者: 赤木正信1 本山洋1 三隅厚信1 桑野麗雅1 坂本彰一郎1 池田正光1 麻生啓輔1 白石幸明

所属機関: 1熊本大学医学部吉永外科

ページ範囲:P.695 - P.700

文献概要

はじめに

 胃癌の診断,ことに早期胃癌の診断にはレ線検査,内視鏡検査に加えて直視下胃生検および細胞診は欠くことのできない診断方法となっている1)2)3)4).この中レ線検査,内視鏡検査はいつれも厳密には推定診断であって,最終的にはやはり病理組織診断によらねばならない.この意味で直視下胃生検ならびに細胞診は高く評価されねばならないが,その診断能には種々の制約を免れ得ない.即ち生検および細胞診によってより良い診断成績をあげるためには,まず第一に病巣から確実に生検材料あるいは細胞を採取しなければならない1)2)7).第二に採取された組織ないし細胞について,正確な診断を下すことである.

 第一の問題については,最近内視鏡検査法の発達により漸次解決されつつあるが,第二の良性,悪性の鑑別にはなお多くの問題が残されている.

 切除標本での癌の診断は(太田5))①破壊浸潤,転移,②組織異型,③細胞異型の組織学的基準よりみて大方可能であるが,早期胃癌,ことに①の破壊浸潤,転移の所見に乏しい生検材料についての良性,悪性の鑑別は困難な場合が少なくない6).また細胞形態学的異型度を以ってする細胞診においても限界があり,PapanicolaouⅢ度に良性,悪性の鑑別上の問題がある.

 一方,酵素組織化学的方法の開発とともに癌の代謝面からの解明がなされ,未だ癌細胞に特異的な現象を捉えるには至っていないが,その組織化学的性状が逐次明らかにされつつある.従ってこのような観点から癌の診断についても,病理形態学的検索と同時に組織化学的面からの追求も試みられるべき方法であろう.

 私どもは胃生検材料,ことに胃癌のそれについて酵素化学的検査を行ない,鑑別診断上の意義について検討しているが,その中でphosphorylase反応は癌細胞診断にある場合には著明に役立つと言う(武内)ことから,それを中心にこの問題にふれてみたい.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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