文献詳細
今月の主題 胃診断学20年の歩みと展望―早期胃癌を中心として
主題
文献概要
要旨 最近の約20年間の早期胃癌診断学の進歩を概観した.1962年の田坂らによる早期胃癌の定義・肉眼分類の発表は,それ以前の胃鏡,胃カメラ,胃X線検査などによる診断学の集大成であり,その後のファイバースコープ・二重造影時代への基盤をなすものとして,決定的な役割を果たしてきた.また,ファイバースコープ直視下胃生検法の確立は,早期胃癌の診断を,より確実・容易にし,生検法の普及を促進した.このような診断能の向上は,早期胃癌の発見数を増しただけでなく,早期胃癌の成長速度・成長様式(悪性サイクル,linitis plasticaなど)・発生母地などについての新しい知見をもたらした.近年では,一層の診断能の向上を目指して,色素内視鏡・拡大内視鏡・レーザー内視鏡・超音波内視鏡などが実用化されている.また,生検組織グループ分類の改正案を相い補うものとしても,新たな生検法strip biopsyが登揚したことの意義は大きい.結論としては,この20年あまりのわが国での早期胃癌診断の進歩は,十分な成果を収めたと言える.しかし,微小胃癌診断学の確立と発見率の向上,更には胃癌の予防までを目指して,今後より一層の努力が必要であろう.
掲載誌情報