今月の主題 食道癌の早期診断
主題
食道粘膜下層癌の臨床診断
著者:
井手博子1
山田明義1
吉田操1
押淵英晃1
村田洋子1
遠藤光夫2
所属機関:
1東京女子医科大学消化器病センター外科
2東京医科歯科大学医学部第1外科
ページ範囲:P.1339 - P.1349
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要旨 当センターで切除した食道sm癌92例の脈管侵襲,リンパ節転移の有無に関し病理所見,臨床像を検討した.(1)切除標本の検討では,sm癌の70%に既に脈管侵襲を認め,そのうち45%がn(+)であった.1cm前後の大きさで,表層平坦型,隆起成分の少ない表在隆起型ではリンパ節転移は少ない.また,小範囲のieを伴う複合型が,全く伴わない単純型や,広範囲にieのみられる複合型(すなわち表層拡大型)に比べてn(-)である頻度が高い.組織型では分化傾向を示す扁平上皮癌,特に高分化型で早期癌の頻度が高い.(2)n(+)sm癌は大部分2群以上の遠隔リンパ節に跳躍型の転移を起こしており,n(-)sm癌の累積5年生存率85%に比べ,n(+)では29%と極端に悪い.(3)表在癌のX線診断では,表在平坦型と亜有茎性腫瘤では早期癌の可能性が高い.その他の型では型分類のみでは転移の有無は判定できないが,個々の病巣の不整像,随伴病変の有無およびその性状を参考にすれば,〔ly,V〕と〔n〕はある程度予測できる.(4)表在癌の深達度は内視鏡の病型と密接な関係があり,sm癌は表在隆起型,潰瘍型が大部分であり,びらん型の一部が含まれる.隆起型とびらん型より成る“混合型”は,規約にはないが,sm癌の中でも脈管侵襲の頻度が高く,予後不良の型である.