研究
CEAモノクローナル抗体を用いた大腸腺腫,腺腫内癌,進行癌の免疫組織化学的研究―特に大腸粘液組成との対比について
著者:
久保田芳郎1
武藤徹一郎1
阿川千一郎1
沢田俊夫1
森岡恭彦1
所属機関:
1東京大学医学部第1外科
ページ範囲:P.183 - P.189
文献購入ページに移動
要旨 手術およびポリペクトミーによって摘除された大腸腺腫91例,腺腫内癌7例,進行癌12例について,ホルマリン固定パラフィン包埋後CEAモノクローナル抗体(CM-010)を用いた酵素抗体法によりCEAを免疫組織化学的に染色し,その組織内局在を検討した.更にPeriodic Acid-Thionin Schiff/Potassium Hydroxide/Periodic Acid-Shiff(PKP)染色により大腸粘液のシアル酸組成を検索しCEAの染色性と対比した.その結果CEA陽性でかつシアル酸の側鎖に隣接する水酸基を有しPKP染色で紫~青に染まる症例は軽度異型腺腫 22/74(30%),中等度異型腺腫 13/17(76%),腺腫内癌 5/7(72%),進行癌 12/12(100%)と組織学的異型度が増すにつれ両者とも増加しており,CEAと側鎖に隣接する水酸基を有するsialomucinの出現は互いに関連していると考えられた.以上よりadenoma-carcinoma sequenceにおける形態学的な変化と並行ないし先行してbiochemicalな変化がみられることが示唆され,大腸癌のhigh risk群の検索に利用できる可能性があると考えられた.