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文献詳細

雑誌文献

胃と腸20巻7号

1985年07月発行

文献概要

今月の主題 小腸診断学の進歩―実際から最先端まで 主題研究

回腸終末部を除く回腸,空腸のパイエル板の研究―切除標本の術後造影および固定標本レントゲノグラムによる検討

著者: 牛尾恭輔1 笹川道三1 山田達哉1 板橋正幸2 廣田映五2 市川平三郎3

所属機関: 1国立がんセンター放射線診断部 2国立がんセンター病理部 3国立がんセンター

ページ範囲:P.747 - P.757

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要旨 小腸には集合リンパ濾胞であるパイエル板が存在し,この部は局所免疫機構の場として働き,また,小腸疾患の発生や進展に際しても関係が深いと考えられている,このパイエル板が回腸末端~回腸下部に多いことは,よく知られている.しかし,それより口側の回腸や空腸にも存在しうることは,意外と知られていない.特にパイエル板が空腸にあるか否かについては,解剖学や組織学の成書でも明確にされていないことが多い.そこでわれわれは,種々の原因で切除された小腸標本の13例(非びまん性病変8例,びまん性病変5例)にて,新鮮切除標本の二重造影像,固定標本のレントゲノグラムを撮影し,回腸終末部(回盲弁より口側30cmとした)以外のパイエル板について,存在の有無,腸間膜との関係,肉眼および組織像による形態と表面構造の特徴を検討した.その結果びまん性病度では粘膜表面からパイエル板を指摘することはできなかった.だが非びまん性病変の8例に関しては以下の結果を得た.①パイエル板は回腸終末部より口側の小腸にも認められ(8例中8例),空腸にも存在した(5例中5例),②8例から検討しえた25個のパイエル板の大きさは,最小5mm,最大45mmで平均15.4mmであった,③パイエル板部の粘膜表面は,周囲の絨毛粘膜部に比して,領域性を有した網目像や顆粒像を呈した,④パイエル板は腸問膜の反対側に存在した,⑤パイエル板部ではKerckring皺襞は欠如ないし消失していた,⑥肉眼では認識困難で,固定標本レントゲノグラムでのみ発見可能なパイエル板も存在した.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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