今月の主題 小腸診断学の進歩―実際から最先端まで
主題研究
呼気中水素測定法および輸送電位測定法による小腸糖消化吸収能の検討
著者:
石川誠1
高橋恒男1
多田久人1
金子正幸1
升川浩1
秋葉太郎1
鈴木豊1
鈴木利宏1
新沢陽英1
所属機関:
1山形大学医学部第2内科
ページ範囲:P.789 - P.795
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要旨 呼気中水素測定法および輸送電位測定法により糖質の消化吸収能について検討した.われわれが作製した閉鎖循環式回路(closed system)を用いた呼気中水素測定法によるキシロース試験では,全水素排出量を測定時間(180分)で除して得られる平均呼気中水素排出量と5時間尿中キシロース排泄量との間に有意の相関が認められ,短腸症候群症例のみが平均呼気中水素排出量0.19ml/min以上の高値を示した.本法は従来の尿中排泄量測定法に比し腎機能に影響されず老年者を含めた吸収不良症候群の吸収試験法として有用である.open systemによる呼気中水素測定法を用いてデキストリン大量投与時の消化吸収能と加齢との関連を検討した結果では,70歳未満の健常者では200g負荷時にも呼気中水素濃度の上昇はみられなかったのに対し,70歳以上の老年者では有意の高頻度で呼気中水素濃度の上昇がみられた.これは,加齢と小腸通過時間には関連が認められないことからデキストリンの小腸での消化吸収が不十分であることが主因と考えられ,70歳を超える老年者では糖質に対する忍容力の低下することが示唆された.糖輸送電位測定法による肝疾患における糖質の消化吸収能についての検討では,D-glucoseは肝疾患,特に肝硬変でも吸収障害は認められなかったが,二糖類のsucrose,maltoseについては肝硬変でPDmax,Ktの低下傾向が認められた.刷子縁のdisaccharidase活性低下に起因する可能性が考えられる.