今月の主題 大腸癌の発育・進展
主題
Retrospectiveにみた大腸癌の発育・進展
著者:
松浦昭1
小林世美1
春日井達造1
所属機関:
1愛知県がんセンター第1内科
ページ範囲:P.859 - P.865
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要旨 大腸癌の初期像,発育速度および発育過程における形態的変化をretrospectiveに検討し,若干の知見を得たので報告した.1965~1982年に愛知県がんセンターで手術あるいはポリペクトミーを行った大腸癌のうち,発見時点でretrospectiveにフィルムを見直しえた20例中,10例が初期病変,doubling timeの検討に有用であった.最終病変が進行癌であった6例の初期病変の平均径は約1.0cm,早期癌では0.8cm,形態は進行癌では6例中5例が無茎,1例が亜有茎,早期癌では4例中2例が無茎,2例が亜有茎であった.発育速度をCollinsの方法で算出した.最終病変が進行癌で発見された症例の平均doubling timeは218日,早期癌では731日で,doubling timeの早いものと遅いものが存在することが推定された.最初5mmの腺腫であると仮定し,上記doubling timeを用いて1cmになる日数を算出すると,夫々1年11か月(doubling time 218日),6年(731日)を要すると推定された.5~10mm大の病変を発見した揚合,これがdoubling timeの早い病変か遅い病変かの区別は,その時点では困難である.5mmの腺腫が1cmに増大するには早いdoubling timeをとるとしても約2年を要することから,5mm以下の腺腫に対する次回の検査は2年後でもよいと思われた.