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文献詳細

雑誌文献

胃と腸20巻9号

1985年09月発行

文献概要

症例

直腸癌経過中に発症したCronkhite-Canada症候群の1例

著者: 水町信行12 滝紀雄12 川崎康彦12 宮崎純一3 関根一郎4

所属機関: 1高知県立西南病院外科 2現長崎大学第2外科 3高知県立西南病院病理 4長崎大学原爆後障害研究施設病理

ページ範囲:P.1033 - P.1040

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要旨 患者は75歳男性で,入院17か月前に下血が出現し直腸癌の診断を受けたが放置していた.10か月後下痢が出現し,その後皮膚色素沈着に気付いた.14か月間に10kgの体重減少を認め1981年8月入院した.入院時,手,足の爪の萎縮を認め,直腸に全周性の限局潰瘍型腫瘤を触知した.その後体毛の脱落を認めた.検査成績では軽度の貧血と血清K,Ca値の低下,血清総蛋白の著明な低下(4.3g/dl)を認め,CEAは12.4ng/dlと高値を示した.消化管X線および内視鏡所見では胃,結腸,直腸に多数のポリープがみられたが,食道,小腸にはみられなかった.直腸には全周性の狭窄を示す限局潰瘍型腫瘍を認めた.生検では胃ポリープはhyperplastic polypであり,直腸腫瘍は腺癌であった.直腸癌の治療目的にて直腸切断術を施行した.切除標本では直腸に6.0×4.7cmの限局潰瘍型癌を認め,標本全体に無数の小ポリープを伴う横ひだがみられた.組織学的には直腸腫瘍は高分化型腺癌であった.ポリープには2つの型がみられ,大部分を占める型は腺管の囊胞状拡張,間質の浮腫,炎症細胞浸潤がみられ,他の型のポリープは腺腫または腺腫性腺管の集簇である.術後,下痢の消失,体毛の再生,皮膚色素沈着の改善がみられ,手足の爪は剥離し再生した.人工肛門粘膜面のポリープは背が低くなり,発赤は軽度となりoozingは消失した.その後肺炎に罹患し,下痢,粘血便の再発がみられ肺炎のため死亡した.下血発症後1年8か月であった.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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