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文献詳細

雑誌文献

胃と腸20巻9号

1985年09月発行

文献概要

Coffee Break

潰瘍の再発をめぐって(その3)―H2受容体拮抗剤と再発

著者: 五ノ井哲朗1

所属機関: 1福島県立本宮病院

ページ範囲:P.1050 - P.1050

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 最近,新しい潰瘍治療剤が相次いで登場しているが,なかでもH2受容体拮抗剤(以下,H2B剤)は画期的な治療剤という評価を得ている.しかし,ここで取り上げるのは治療効果の話ではなく,治療後の再発の問題である.H2B剤による治療後に再発の多いことも周知で,その理由についてもいろいろな説明が試みられているが,結局は,“H2B剤を以てしても潰瘍の自然史は変えられない”というのが,その要約のようである.

 報告された再発率の数字も多様で,1年累積再発として,30%とし,50%といい,また70%とし,更には3か月で70%という報告さえある.その昔,制酸剤や抗コリン剤などを用いて潰瘍の治療をし,後療法を行っていた時代の再発率,例えば,有名な原らの観察データでは,1年累積再発率は約10%,それが50%を越えたのは,7~8年の間であった.この数字1つを比較しただけでも,H2B剤治療後の再発率の高さが尋常でないことは明らかである.現在,制酸剤や抗コリン剤の再発予防効果については否定的な意見が多い.すなわち,原らの成績も自然経過に近いということになろうか.とすれば,H2B剤が,自然経過を変えないという要約は疑問である.むしろ,H2B剤は,潰瘍の自然史を著しく変容させるというべきではないか.H2B剤は,潰瘍を治して,潰瘍症を悪化させるのではあるまいかなどと思ってみるのは疑心暗鬼というものであろうか.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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