今月の主題 消化管の“比較診断学”を求めて(1)
主題
胃と大腸の腺腫の臨床病理学的比較
著者:
中村恭一1
赤羽久昌1
菊池正教1
渋谷進1
大倉康男1
所属機関:
1筑波大学基礎医学系病理
ページ範囲:P.65 - P.74
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要旨 胃と大腸の腺腫およびそれと癌との関連について,統一的基盤の上に立って比較を行った.その結果,①腺腫の肉眼形態は腺腫の発育様式と場の性質によって決定されるものであり,大腸では場の性質から有茎性発育の傾向が著しい.②腺腫の肉眼形態決定の1つの要因である発育様式から,粘膜内の水平方向への進展が垂直方向のそれよりも優勢であることは組織学的に悪性を疑わせる1つの所見であることが示唆された.③胃の腸上皮化生粘膜系列と大腸粘膜系列との腺腫の癌化率に関して,腺腫の癌化の組織学的基準およびより客観的な異型度認識という統一的観点からは,現在のところ,それらはそれぞれ多くとも4%と10%,それ以下であるとみなされた.④胃と大腸の癌の大きさと早期における粘膜下組織浸潤に関して比較すると,大腸のde novo cancerは1cm前後,腺腫由来の癌ではその大きさが2cm以上である.一方,胃の腸上皮化生粘膜系列のそれは2cm前後であり,胃固有粘膜系列では幽門腺粘膜から発生した未分化型癌は2cm,胃底腺粘膜からのそれは1cm前後と,癌の組織発生と癌の発生の場によって異なっている.