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文献詳細

雑誌文献

胃と腸21巻1号

1986年01月発行

文献概要

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海外文献紹介「アンピシリンは胆汁コレステロールの分泌を抑制する」

著者: 種広健治1

所属機関: 1愛知県がんセンター第1内科

ページ範囲:P.14 - P.14

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Ampicilin inhibits biliary cholesterol secretion: Apstein MD, Russo AR (Dig Dis and Sci 30: 253-256, 1985)

 胆汁中の脂質構成の変化はコレステロールの溶解度を変えコレステロール胆石の形成と溶解に影響を及ぼす.脂質構成の決定に重要な役割を持つのは胆汁酸塩であるが,それ以外の物質もありうる.Carulliらはアンピシリンがヒトの胆汁の脂質構成を変え胆汁飽和指数を対照の75%に減少させることを示し,その機序としてアンピシリンが細菌によるコール酸からデオキシコール酸への変換を阻害しコール酸プールを増加させることを挙げた.しかし,アンピシリンはビリルビンやBSPと同様胆汁中に分泌され,胆汁酸塩の分泌には影響を及ぼさず,コレステロールとリン脂質の分泌を直接抑制する可能性がある,そこでラットを用いアンピシリン投与前,中,後の胆汁中の胆汁酸,リン脂質,コレステロール,アンピシリンの濃度を測定した.アンピシリン静注開始後15分以内に胆汁量とアンピシリンの分泌が増加し始めた.同時にリン脂質とコレステロールの分泌が減少し始めたが,胆汁酸塩の分泌は一定であった.45分後にはアンピシリンの分泌は一定であったが,リン脂質の分泌は60%に,コレステロールの分泌は40%に著しく減少した.アンピシリンの注入速度を2倍にしたが,アンピシリン,リン脂質,コレステロールの分泌は変化しなかった.アンピシリンの注入停止により胆汁量とアンピシリンの分泌は減少し,リン脂質とコレステロールの分泌は正常に戻った.アンピシリンによる胆汁量の増加は恐らく浸透圧性利胆作用によるものであり,リン脂質とコレステロールの分泌抑制はアンピシリンの血中から胆汁中への分泌段階における直接作用であろう.結果的にアンピシリンによる胆汁中の脂質構成の変化により胆石形成指数は対照の60%に減少したが,著者らは胆石溶解のためにアンピシリンの使用を勧めているのではなく,ケノデオキシコール酸やウルソデオキシコール酸以外にもアンピシリンのように胆汁中に分泌される薬剤がコレステロールの分泌を抑制しコレステロール結石の形成と溶解に影響を及ぼすことを強調している.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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