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文献詳細

雑誌文献

胃と腸21巻10号

1986年10月発行

文献概要

今月の主題 受容体拮抗薬のもたらした諸問題 主題

ヒスタミンH2受容体拮抗薬による胃潰瘍治癒経過の特異性

著者: 原田一道1 並木正義1

所属機関: 1旭川医科大学第3内科

ページ範囲:P.1059 - P.1067

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要旨 今日,消化性潰瘍の治療薬として各種のヒスタミンH2受容体拮抗薬(以下H2ブロッカー)の優れた治癒促進効果が注目されている.一方,H2ブロッカーを用いた場合,胃潰瘍の治癒経過において,ときに潰瘍底に白色調の隆起をみる例(隆起型潰瘍とする)のあることを,われわれは早くから指摘してきた.その発生頻度をranitidineを投与(300mg/b.i.d.)した105人の胃潰瘍患者についてみると,6例(5.7%)であった.これを通常の治癒経過をとる例(通常型潰瘍とする)と比較検討したところ,治療前の潰瘍の大きさは隆起型潰瘍のほうが有意(P<0.05)に大きく,活動期(A1,A2)から治癒期(S1)に移行する日数も有意(P<0.05)に短かったが,治癒期(H2)から癩痕期(S1)に移行する日数は逆に隆起型潰瘍のほうが長くなる傾向がみられた.胃潰瘍の治癒経過の日数をみてみると,結局は通常型潰瘍よりも隆起型潰瘍のほうが長くなる.つまりこの隆起は潰瘍の治癒経過を遅延させることが多い.隆起型潰瘍を呈するものは,従来の一般的抗潰瘍薬ではまれであり,H2ブロッカーを投与した群に目立つ.これはH2ブロッカーの種類に関係なく,その強力な胃酸分泌抑制作用によって潰瘍の治癒過程に歪みが生じたためと考えられる.具体例を示し,考察を加え報告する.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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