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文献詳細

雑誌文献

胃と腸21巻10号

1986年10月発行

文献概要

今月の主題 受容体拮抗薬のもたらした諸問題 主題

H2受容体拮抗薬抵抗性潰瘍

著者: 吉田行哉1 福地創太郎1 早川和雄1 橋本光代1

所属機関: 1虎の門病院消化器料

ページ範囲:P.1069 - P.1079

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要旨 H2受容体拮抗薬で治療した胃潰瘍219例,延べ262回,十二指腸潰瘍134例,延べ161回の中で,H2拮抗薬に反応して順調に治癒した潰瘍と,治療に抵抗し難治であった潰瘍の間で,種々の臨床的背景因子と環境因子の差を比較検討した.胃潰瘍では,3か月以内に治癒しなかった潰瘍を,十二指腸潰瘍では2か月以内に治癒しなかった潰瘍をそれぞれH2-antagonist-resistant ulcerと定義すると,胃潰瘍では十二指腸潰瘍に比しresistant ulcerの頻度が高く(それぞれ32%,20%),胃潰瘍の中では,H2拮抗薬の治療開始時に活動期にあった潰瘍より,既に治癒期にあった潰瘍でH2拮抗薬抵抗性潰瘍の頻度が高かった.これは,後者の多くが,H2拮抗薬使用以前に既成の抗潰瘍薬(antacidを主とする)による治療で完治するに至らない難治例であったためである.このような潰瘍は胃体部より胃角部潰瘍に多く見出された.患者の職業上の精神的ストレスの有無,潰瘍発症の誘因,喫煙量,食事習慣,睡眠などの環境因子と,潰瘍治癒の難易との間には,明らかな差は見出せなかった,同一症例で再発のため,時期を異にして2回以上H2拮抗薬を使用した胃潰瘍の中には,ある時期には容易に治癒したが,異なる時期には難治を示す症例も少なくなかった.H2拮抗薬による治療に抵抗性を示す要因は一元的なものでなく,個々の症例で異なるほか,同一例でも,時期によって異なる可能性がある.cimetidine抵抗性胃潰瘍26例に対し,ranitidineに切り換えて治療したが,ranitidineが有効であったと推定されるものは8例,無効と推定されるもの8例で,ほかは判定困難であった.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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