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文献詳細

雑誌文献

胃と腸21巻10号

1986年10月発行

文献概要

Coffee Break

胃粘膜を観察した最初の記録

著者: 多賀須幸男1

所属機関: 1関東逓信病院消化器内科

ページ範囲:P.1108 - P.1108

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 W Beaumontが1833年に著述した「胃液および消化の生理に関する実験および観察」を通読する機会があった.消化生理学に関する最も基本的な論文として,また新大陸アメリカで最初の後世に残る研究として医学史では有名である.純粋の胃液は透明な液体で塩酸を含む,空腹時には分泌されずに食物が胃に入ると分泌される,卵白を凝固する,動物および穀物は野菜よりも容易に消化されるなど,胃の消化作用の重要なことはすべて,正確に記載されている.胃ゾンデが発明される30年も以前のことである.

 1822年6月6日ミシガン湖畔の町で散弾銃が暴発して,アメリカ毛皮会社に勤める18歳の青年AS Martinの右季肋部に命中した.陸軍軍医大尉Beaumont(1785~1853)の適切な処置と神の加護で奇跡的に一命をとりとめたMartinは,右季肋部に周囲2.5インチの大きな胃痩を残して治癒した.この胃痩を介して,1825年から33年まで断続的に研究観察した結果をまとめて260頁の上記の本が出版されたのである.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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