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文献詳細

雑誌文献

胃と腸21巻3号

1986年03月発行

文献概要

症例

腸閉塞症状を繰り返した小腸脂肪腫の1例

著者: 種ケ島和洋1 鈴木紘一1 斉藤昭1 河上裕1 小尾和洋1 北洞哲治1 金井歳雄2 篠原央2 宇都宮利善2 向井美和子3

所属機関: 1国立大蔵病院消化器科(現 濁協医科大学医学部放射線科) 2国立大蔵病院外科 3国立大蔵病院病理

ページ範囲:P.303 - P.307

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要旨 患者は59歳,女性.発作性の腹痛・嘔吐を繰り返し,1年前に胆石症の診断のもとに胆嚢摘出術を受けたが症状は変わらず,同症状にて当院外来受診時の腹部単純X線像でわずかなニボー像を認めたため入院となった.臨床所見では軽度の右側腹部圧痛と貧血を認め,便潜血(+)以外には検査成績に異常はなかった.腹痛は翌日軽快し,小腸ニボー像も消失.小腸造影にて空腸中部に表面平滑な長径17mmの腫瘤が明らかにされた.手術所見ではTreitz靱帯より約100cmの空腸に重積した腸管を認め,約25cmを切除.同部の腸管は漿膜側に及ぶ線維性肥厚がみられ,繰り返し重積が生じていたと思われた.その腸管膜付着側に表面平滑な3.0×2.0×1.5cmの山田IV型ポリープを認め,組織学的に脂肪腫と診断した.1980~1982年における本邦の集計では,脂肪腫は27例と,小腸良性腫瘍中26%を占め,男女差は認めず発症は30~80歳台に広く分布している.大きさは10cm以下が95%で,部位はTreitz靱帯とBauhin弁から各々60cm以内の小腸に82%が存在し,小腸狭窄,閉塞症状により発見された症例が66%を占めた.有症状時の腹部単純X線写真が手掛かりとなって,術前に病巣の存在診断が可能であった小腸脂肪腫の1例を報告し,本邦における文献的考察を加え小腸良性腫瘍の問題点につき言及した.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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