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文献詳細

雑誌文献

胃と腸21巻5号

1986年05月発行

文献概要

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海外文献紹介「直腸の絨毛腺腫:ArgonレーザーとNd:YAGレーザーを用いた内視鏡的治療の結果」

著者: 亀谷章1

所属機関: 1愛知県がんセンター第1内科

ページ範囲:P.496 - P.496

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Villous adenoma of the rectum: Results of endoscopic treatment with Argon and Nd: YAG lasers: Brunetaud JM, et al (Gastroen-terology 89: 832-837, 1985)

 直腸のvillous adenomaはmalignantpotentialを有し,症状は粘液便,下痢,出血,閉塞などである.治療法は従来より電気凝固法,Snare resection,局所放射線療法,cryosurgery,外科的切除などがあるが,再発率が高く,radiation colitis,インポテンツ,人工肛門など精神的不安を伴う合併症もあるので理想的な治療法とは言えない.著者らは56例の直腸villous aednomaを対象に,レーザー治療を行い,その有用性を報告している.レーザー装置はNd:YAGレーザーとArgonレーザーで病変によって使い分けた.すなわち,前者は大きな隆起や結節様病変に用い,腫瘍の表面が白色化するまで照射した.後者は平坦な無茎性病変,肛門に近い病変,YAGレーザーによる治療後の残存病変に用い,組織が蒸散し,表面が平坦になるまで照射した.対象は56例(男20人,女36人)で平均年齢は70歳である.治療前の組織診断はmilddysplasia 21人,moderate 22人,severe 13人であった.成功の判定基準はレーザー治療3か月後の内視鏡,組織所見で腫瘍の消失をみたものとした.4人は経過観察不能のため治療が完了できなかった.5人は途中でinvasive carcinomaと診断され,手術など他の治療法に変えられた.5人はradiation colitisを合併しておりレーザー治療の効果判定が困難であった.残りの42人は平均11.8か月間経過観察可能であった.4人の脱落例とradiation colitisを有した5例を除くと,成功率は47例中42例で89%と高かった.再発率,平均治療回数は,腫瘍の大きさによった.すなわち,C1(≦1/3周),C2(1/3<C2く2/3周),C3(≧2/3周)に分けると,平均治療回数はC12.7,C26.8回,C315.6回であり,再発率はC1,C2では34例中3例で9%と低かったが,C3では8例中5例で63%と高かった.本治療法の利点は,高齢者や衰弱者にも安全に施行できることであるが,組織を破壊してしまうので十分な組織学的検索ができないことが問題であり,治療前の正確な診断や内視鏡医,外科医,病理医で適応を十分検討することが重要である.著者らは,①手術を拒否したり,手術が適当でない場合で従来の治療法で再発した場合,②高齢者や衰弱している場合,③生検で良性であり,手術するにはあまりにも小さい病変などが良い適応と考えている.

【訳者コメント】私どもの施設では,消化管の腫瘍(癌,腺腫など)に対し,著者らと同様の適応でNd:YAGレーザーと腫瘍親和性物質(Hematoporphyrin erivative)にArgon-dyeレーザーを組み合わせたPhotodynamic therapyを施行し良好な成績を得ている.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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