今月の主題 電子スコープの現況
主題
電子スコープの微細診断能―大腸
著者:
岡田利邦1
西澤護1
牧野哲也1
所属機関:
1東京都がん検診センター
ページ範囲:P.35 - P.44
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要旨 電子スコープ(TCE-50M)を用いて臨床例および固定標本の大腸粘膜を観察し,その存在診断能および質的診断能を検討した.EES-50Aプロセッサー本体のVTRに病変を録画し,VTRから必要な1画面ずつを1M byteのフロッピーディスクに取り込み,それを原画とした.画像処理の診断学的有効性を知るため,高速画像処理装置(TOSPIX-U)で原画を処理した.画素数10万で極めて鮮明かつ解像力の良い画像が得られ,存在診断能は極めて高いと評価できた.一方,質的診断能を評価するため,大腸の微細な網目模様mucosal detailの,また,5mm前後の微小隆起が示す異常腺口模様像abnormal pit patternsの認識が可能かどうかを検討した.網目模様については,肉眼でそれと認識しにくい固定標本を電子スコープで観察すると辛うじて認識でき,更に画像強調によって一層明瞭となる.しかし,臨床での安定した網目模様の観察は現時点では,好条件下でのみ可能である.異常腺口模様像については良性のパターンか癌を疑うべきか判断を下せるだけの解像力は今はない.この原画を画像処理すると,模様像の特徴が描出され,質的診断がしやすくなる.しかし,現在の画素数では画素単位のノイズが腺口模様像に重なるため,微細診断を困難にすることが多い.この微細構造は原理的に認識可能な範囲にある.CCDはまだ揺藍期にあり,しかもその改良は日進月歩である.近い将来,画素の高集積性と画像処理の技術がリアルタイムの微細診断を可能にするであろう.更にコンピューターのICとして活躍してきた同じシリコンチップが,今度はイメージ・センサーとして実用化されたものの1つ電子スコープが,その物理学的特性によってファイバー内視鏡と置き換わる可能性を筆者は確信している.